HPVワクチン積極的勧奨再開に伴う支援体制の拡充等を求める要望書

公開日 2021年12月21日

2021年12月1日

厚生労働大臣 後藤 茂之 殿

東京保険医協会
         会   長    須田 昭夫
研究部長  申 偉秀

HPVワクチン積極的勧奨再開に伴う支援体制の拡充等を求める要望書 

 

 貴職におかれましては、国民の医療と健康を守るための日夜のご奮闘に敬意を表します。

 ところで、「HPVワクチンの積極的勧奨再開」が決定され、11月26日に「ヒトパピローマウイルス感染症に係る定期接種の今後の対応について」 が発出されました。

 しかし、HPVワクチン接種後の健康被害に対する調査・分析、補償の体制、ならびに治療・相談支援体制の確立は、未だ不十分と言わざるを得ません。積極的勧奨にあたっては、これらの強化・充実を図ることが先決であり、補償・支援体制の拡充の確立を第一条件として「再開」すべきです。
 子宮頸がんからいのちと健康を守るためには、HPVワクチンだけではなく、子宮頸がん検診の実施が不可欠です。しかし、現在の日本の子宮頸がん検診受診率は40%台であり、欧米先進国の70~80%台と比較して極めて低水準です。誰もが費用の心配なく子宮頸がん検診を受けられる体制をとり、受診勧奨も併せて行うべきです。
 また、10代の若い世代がワクチン接種と性に関する正しい知識を身に付けることが大前提であり、性教育をしっかり行うことが必要です。
 現在日本ではHPVワクチンは3回接種ですが、WHOは15歳未満に対して2回接種を推奨しています。これに対し、多くの国が2回接種を採用しています。3回目の接種により無用な副反応が生じることを避けるためにも、15歳未満について、2回接種の有効性を判断する臨床試験を開始してください。
 日本で定期接種となっている2価と4価は、子宮頸がんの原因の50~70%を防ぎます。しかし、9価ワクチンは子宮頸がんの90%あるいはそれ以上が予防可能になると指摘され、多くの国で認可、使用されています。日本でも9価ワクチンの臨床試験を行い、その安全性・有効性の検証を行う必要があります。
 以上の理由により、実地医家の立場から、下記の取り組みを要望します。

 

 

一、    HPVワクチン接種後の健康被害に対する相談体制を強化・周知し、被害者救済のために無過失補償の対象を拡充すること。
一、    HPVワクチン接種後に多様な症状を呈する患者への治療体制の強化・充実を図ること。特に地域の診療所・病院が連携して治療に取り組める体制を整え、周知すること。
一、    希望者全員が費用の心配なく子宮頸がん検診を受けられるようにし、受診率を高めること。また子宮頸がん検診受診を予防接種とリンクして、受診を啓発すること。
一、    ワクチン接種、性感染症、性行為における同意などを含む、学校における若い世代への充実した性教育を行える教育現場の環境整備を行うこと。
一、    15歳未満について、WHOや多くの国で推奨している2回接種の有効性の臨床試験を開始すること。
一、    HPVワクチン接種後の副反応に至るメカニズムの究明および副反応に対する治療法の研究を国として支援すること。
一、    9価ワクチンの臨床試験を早急に行い、安全性・有効性を確認し定期接種の対象とすること。

以 上


HPVワクチン積極的勧奨再開に伴う支援体制の拡充等を求める要望書[PDF:162KB]