【会員寄稿】オミクロン株に罹患して気づいたこと

公開日 2022年03月02日

 オミクロン株を中心とする新型コロナウイルス感染症の第6波において、医療者にとって感染リスクはより差し迫ったものになっています。会員からお寄せいただいた感染の体験談を紹介します。

感染のきっかけと経過

 1月17日、初診の患者が喉痛と微熱を訴えて来院しました。怪しいと思って、外の仮設テントで、フェイスシールド、サージカルマスク、ゴム手袋という標準予防策を講じた上で診察したのですが、その夕方から私の体調が悪くなり、熱はないものの、喉の痛みと寒気を感じました。

 どうももらってしまった可能性が高いと思い、18日に自分もPCR検査を受けたところ、その日に発端となった患者の陽性判定が来て、翌19日には私にも陽性の結果が出ました。

 手元にあったイベルメクチン18㎎を怪しいと思った18日から2日間だけ服用しました。自分は体重が多いのでマックスで飲みました。また19日の夕方にラゲブリオが手元に届いたので、19日夜から服用を開始。葛根湯もPCR検査を受ける前、体調不良を感じた時点から飲み始めましたが、3日後には症状が軽快しているように感じたので、葛根湯はその時点で中止しました。

 19日夜だけラゲブリオとイベルメクチンの併用となり、ラゲブリオは特例承認の薬で、イベルメクチンとの相互作用は未知なので心配はありましたが、特に副作用は感じませんでした。

 ラゲブリオを5日間しっかり飲みましたが、インフルエンザのタミフルのように劇的に効いている感じはなく、といって悪化するわけでもありませんでした。喉の違和感と鼻汁が続いて何となく本調子ではないという感覚がありましたが、ラゲブリオ服用3日目くらいからは少しずつ症状が薄れてきました。また食欲はあり、味覚の異常もなく、室内では普通に動き回れる状態でした。ひたすら自室で安静に努め回復を待ちました。

 23日頃からは症状も全くなくなり、27日に自宅療養期間を終えて職場復帰することができました。

軽症患者には保健所から連絡が来ない?

 オミクロン株に実際に罹患してみて気がついたことを書きます。

 まず、罹患患者への保健所からの連絡についてです。当院はかかりつけ患者のみの診療・検査医療機関として登録しており、自宅療養のサポートには手上げしていませんでした。そのため、HER―SYSの届出項目の「電話等による診療」の有無については、私の診療所で確定した方の場合は「無し」にチェックしています。

 この場合、保健所からの観察になるはずですが、軽症でMY HER―SYSに登録すると、保健所から患者への電話連絡はないということがわかりました。

 私がもらってしまった発端の患者から、届出の翌日に電話で「保健所から全く連絡が来ない」と相談を受けました。その時は、「混んでいるからたまたまだと思う。心配なら保健所に連絡してみてください」とアドバイスしたのですが、私自身が罹患してみてMY HER―SYSに登録すると、保健所からの電話が一切無く、MY HER―SYSから毎回同じ「健康観察に入力するように」という無機質な文章が届くだけでした。

 おそらく感染が爆発して個々に連絡ができないので、中等症や重症の患者を優先して、MY HER―SYSにきちんと毎日健康状態を報告している人には、変化が無い限り連絡しない扱いなのだと思われます。

 悲しいかな、気をつけていたのに、妻も陽性になってしまい、妻から同居の三女にも感染してしまいましたが、妻にも三女にも電話連絡はありませんでした。

これまでの感染予防策では防げない

 オミクロン株の感染力は、やはりこれまでの株とは違うと思われます。

 近所で検査発熱外来をしていた先生は、診察時にN95マスクにフェイスシールドもしていたのに、感染してしまったそうです。

 私から妻へも、どうしてうつったのかわかりません。私は1階にある自室から1階のトイレを使い、マスク着用で自室を出ていました。同居の三女と四女と妻は2階の居室と2階のトイレを使って、完全に動線を分離していました。妻は食事の世話をしてくれたので、そのためかなとも思いますが、トレーに乗せた食事を私の部屋の前に置いてもらい、自室に戻ったらLINEしてもらって、それから食事をとるという流れで、直接顔は一切合わせていません。

 風呂は他の家族全員が入って自室に戻ってから最後に私が入浴し、窓を全開にしていました。タオルも私専用で、使ったタオルは家族とは別の所に入れ、自分の衣類と共に自分で洗い、自室に干していました。

 ここまでやったのに妻が感染したのはショックでした。ただ、妻は私が陽性になった後、発熱等で来院した患者に、私が感染して診療できないことを説明するためにクリニックに行っていたので、そちらからうつった可能性も否定はできません。

 戸建ての家ですらこれですから、マンション、アパート等では家族内感染は防ぎようがないと思います。ホテル療養が理想ですが、そちらも満杯だということなので、当分は歯止めがかからないように思います。

 既に書いた通り、症状については、喉の痛みや違和感が比較的多く、発熱は伴わない場合も多いように思います。そのため、市販の風邪薬でかなり症状はマスクされるので、外来の患者には市販の風邪薬の服用の有無を確認する必要があります。

 デルタ株と同じつもりで、新型コロナ感染症ではなさそうと思って診察すると、自分やスタッフが感染してしまう可能性がありますので、細心の注意が必要です。

 ご参考になれば幸いです。

(『東京保険医新聞』2022年2月15日号掲載)