[談話]生活保護受給者へのマイナンバーカードの取得強要に抗議する

公開日 2022年06月11日

生活保護受給者へのマイナンバーカードの取得強要に抗議する

 


政策調査部長 吉田 章

 

 生活保護受給者を標的にした政策的強要が行われるのは今回が初めてではない。2018年10月には、医師又は歯科医師が医学的知見に基づいて後発医薬品を使用することができると認められた場合は、原則として後発医薬品を給付する扱いが定められた(生活保護法第34条3項)。

 生活保護受給は国民の権利であり、「身分」ではない。医療の給付という、いのちと健康に関わる領域で、生活保護受給者のみ差別することは、憲法14条(法の下の平等)、25条(生存権)に違反しており、決して許されない。

 また、通知書には自治体からの案内に従わない場合の罰則については書かれていない一方で、マイナンバーカード取得により最大20,000円分のマイナポイントが付与される旨が記載されている。こうした「特典」による誘導も、国民の自己決定権を侵害するという点において罰則による誘導と等しく問題であり、生活に困窮する立場の人々を対象としていることを鑑みれば、その非人道性は明らかである。

 2022年5月8日時点で、オンライン資格確認を行っている医療機関は全国で18.7%に過ぎず、マイナンバーカード利用を原則化すれば、医療へのアクセスが大幅に制限されることになる。だが、そもそもオンライン資格確認は、医療機関への経済的な負担、受付業務の煩雑化、カード紛失や情報漏洩のリスクなどの根本的な問題を抱えており、医療現場での普及が進まないのには合理的な理由がある。

 東京保険医協会は、生活保護受給者の資格確認にマイナンバーカードの使用を強要する方針の撤回を求める。

(『東京保険医新聞』2022年5月25日号掲載)