政策懇談会Vol.3 山岸一生・松尾明弘氏(立憲民主党)と国会情勢からデジタル政策まで幅広く懇談

公開日 2022年06月11日

 政策調査部は5月14日、山岸一生氏(立憲・衆)・松尾明弘氏(立憲・前衆議院議員)を招き、政策懇談会「自己責任から支え合いへ~いのちを守る社会の実現を~」を開催し、会場・Zoomを合わせ24人が参加した。



山岸 一生 議員


松尾 明弘 前議員

政権に対する問題意識 「緊張感のある政治」を

 山岸一生議員は、国会議員を志すきっかけとなった政権への問題意識と、現在の国会の状況について報告した。山岸議員は15年間の新聞記者経験の中で総理官邸担当などを務め、安倍政権の「緊張感のない」政治に対して疑問を持つようになった。そして、記者としての第三者的立場ではなく国政に直接関わりたいと考えるようになり、2021年10月の衆議院議員選挙で初当選した。

 現在開催されている通常国会については、参議院選挙を斟酌して野党との対立を避けている岸田政権は職責を果たしていないと批判した。また、今国会からは「官僚に対するパワハラだ」として野党合同ヒアリングが中断されている。山岸議員は、「合同ヒアリングがなくなったことで国会質問で野党の十分な連携ができず、内容が重複することもあるため審議の効率が悪くなっている。また、質問内容がマスコミに注目されづらくなったことで、世論への影響が出にくくなってしまった」との見解を示した。

 また、山岸議員は「コロナ禍を乗り越えた後も、国民生活へのダメージや健康への影響は広く長期に及ぶだろう。国民の『くらしと命を守る』ために引き続き尽力したい」と力強く語った。

穴だらけのデジタル政策 日本に必要なものとは

 松尾明弘前議員は、医療・経済・安全保障政策に加えて、マイナンバーカードの普及を含むデジタル政策について提言を行った。松尾氏は、「ロシアのウクライナ侵略に乗じて軍備増強論が唱えられているが、コロナ禍における医療・社会保障制度の建て直しの方が逼迫した問題であり、政府は優先順位を誤っている。このような状況下で、さらなる社会保障の後退につながる後期高齢者の窓口負担2割化や都立・公社病院の独法化を行ってはならない」と指摘した。

 また、日本のデジタル政策について、昨年9月にデジタル庁が600人規模という過少な職員数で発足したことや、担当大臣の個人情報保護の重要性への無理解を指摘し、「行政にIT業界の専門家の意見を取り入れることが不可欠」と強調した。さらに、適切に整備がされていない現行の個人情報保護法のもとで、マイナンバーカードによる一元的な個人情報の管理を行うことへの危機感を示し、「マイナンバーカードで医療情報を取り扱うことの危険性について医療現場の意見をいただきたい」と述べた。

 質疑応答では、山岸議員は「コロナ禍や消費税増税によって負担が増えたにもかかわらず、日本の社会保障が後退していることに不信感や憤りを覚える」という意見に対し、「コロナによる日本社会への打撃は多岐にわたる。国民生活への影響について長期的に検証・調査した上で対策が必要だ」と回答した。

 松尾前議員は「新型コロナ診療にあたって、医療機関は東京都と国から様々な報告を求められているが、報告システムが混在し、一部を除いて相互に連携していない。煩雑な入力作業は新型コロナ診療やワクチン接種に追われる医療現場の負担になっているため、これらのシステムを一本化してほしい」という要望に対して、「システムの一本化は必要だ。現場の意見を国政に反映させるべく尽力したい」と語った。また、「政府はマイナンバーカードによるオンライン資格確認で個人の医療情報を集め、二次利用することを企んでいる。個人情報の保護の観点から、マイナンバーカードと医療情報の連携は進めてはならない」という意見には、「同感だ。デジタル庁は医療情報を二次利用しようとしているが、医療情報等の重要な個人情報を一元的に取り扱うことは危険だ」と答えた。

 その他にも「診療報酬のマイナス改定、都立・公社病院の独法化、病床の削減、実情とは乖離した『勤務医の働き方改革』等、コロナ禍であるにもかかわらず医療体制を後退させる政策が実施され、セーフティネットが壊れつつある」「自己情報コントロール権を法文に明記するべきだ」「経済安全保障に関わる利権が生じていることに危機感を感じる」「選挙における若年層の投票率が低すぎる。若者が候補者や政党について関心を持てるよう積極的な情報発信をお願いしたい」等、閉会まで活発に意見交換が行われた。
 

(『東京保険医新聞』2022年5月25日号掲載)