オンライン資格確認 義務化方針に抗議

公開日 2022年06月11日

 保険医療機関でのオンライン資格確認について、厚生労働省は2023年4月からのシステム導入義務化の方向で検討を開始した。療養担当規則の改正を図る方向で、中医協で議論を進める予定だ。

オンライン資格確認義務化 保険証廃止等を提案

 5月25日に開催された社会保障審議会医療保険部会では、2023年3月末までにおおむねすべての医療機関・薬局がオンライン資格確認システムを導入することを目標として、普及促進に向けた「更なる対策」の方針案として、①2023年4月から保険医療機関・薬局におけるシステム導入の原則義務化、②関連する財政措置の見直し、③2024年度中を目途に保険証発行の選択制導入、保険証の原則廃止、の3つが提案されている。

 政府は6月にまとめる経済財政運営の指針「骨太の方針」にも上記の方針を盛り込むとしている。

 なお、政府は2022年4月診療報酬改定で新設された「電子的保健医療情報活用加算」について、患者の自己負担が増えることから、マイナンバーカード普及の障害になるとして、廃止を含め見直す方向で検討しており、併せて骨太の方針に盛り込まれる予定だ。

導入義務化は許されない 協会は撤回を要求

 現在、マイナンバーカードの取得は任意である。総務省は「マイナンバーカードは本人の協力のもと、対面での厳格な本人確認を経て発行される必要がある。カード取得を義務付ければ、本人の協力を強要することとなり、手法として適当でない」と説明している。

 しかし、実際にはカードの取得や保険証登録に対してマイナポイントを付与するといった「特典」や、生活保護受給者を標的にした「勧奨」等によって、国民の意思決定への介入が行われてきた。

 今回の保険証の原則廃止・オンライン資格確認システムの導入義務化も、こうした方向の延長線上にあるものといえる。方針案では、「加入者から申請があれば保険証は交付される」としているものの、保険証を原則廃止することになれば、実質的にはマイナンバーカードの取得を国民に強要するに等しい。

 協会はこれまでオンライン資格確認について、経済的な負担や業務の煩雑化、院内でのトラブルの危険性、情報漏洩やプライバシー侵害、個人の医療情報が様々な個人情報と紐づけされて管理される危険性など様々な問題を指摘してきた。オンライン資格確認を導入している医療機関からは、カードの読み取りエラーの多発なども報告されている。

 そもそも、保険資格をオンラインで確認するのに、「マイナンバーカード」を用いたり、「顔認証」を行う必要はない。マイナンバーカードの普及、顔認証機能の普及などの政治的な目的達成の道具として「オンライン資格確認」が打ち出され、そのために莫大な費用が投じられているのが実態だ。

 協会は5月30日、抗議声明を発出した。オンライン資格確認の導入義務化に反対し、国会議員面談等を通じて政府方針の速やかな撤回を強く要請していく。

 

(『東京保険医新聞』2022年6月5日号掲載)