オンライン資格確認 義務化中止を求める

公開日 2022年06月08日

伊藤俊輔議員(衆・立憲/左)
宮本徹議員(衆・共産/左)
国会内集会で、駆け付けた議員に署名を手渡した
(6月2日、衆議院第2議員会館)

  協会は6月2日、国会議員要請を行い、吉田章副会長、細田悟理事、水山和之理事が参加した。

 ①健康保険証を原則廃止し、マイナンバーカードに一本化する方針の撤回、②保険医療機関でのオンライン資格確認導入義務化の方針の撤回、③75歳以上の医療費窓口負担2割化の中止の3点について、全会派の東京都選出国会議員を訪問し、要請した。

 当日は、伊藤俊輔(衆・立憲)、 宮本徹(衆・共産)各議員本人および、笠井亮(衆・共産)、川田龍平(参・立憲)、吉良よし子(参・共産)、田村智子(参・共産)、舩後靖彦(参・れいわ)各議員秘書と面談した。

オンライン資格確認義務化・保険証廃止は撤回を

 厚生労働省は5月25日に開催された社会保障審議会医療保険部会で、オンライン資格確認を行うシステムの導入を2023年4月から保険医療機関・薬局に義務付ける方針を提案した。また、2024年度中をめどに従来の健康保険証の発行について選択制にし、将来的に健康保険証を原則廃止し、マイナンバーカードに一本化する方針も併せて提案した。続いて政府は、6月7日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2022」(骨太方針2022)に同じ内容を明記した。

 2021年10月のオンライン資格確認の本格運用開始以来、政府は医療機関に対して補助金などによる誘導を進めてきたが、オンライン資格確認システムを運用している施設は2022年5月29日時点で19・5%に留まっている。政府は国民に対してマイナポイントを付与するなどしてマイナンバーカード取得を勧奨しているが、2022年5月1日時点で同カードの取得率は44・0%であり、そのうち保険証として利用できる登録をした人は約15%に過ぎない。

 オンライン資格確認システムの導入はほとんどの医療機関にとってメリットとなっておらず、むしろ経済的・実務的な負担や情報漏洩リスクなどデメリットの方が大きい。また、医療情報はプライバシー性が高く、情報漏洩への不安からマイナンバーカードではなく保険証を選択して利用する患者も多い。

 オンライン資格確認システムの導入を義務化し、導入・維持費用とシステム対応の負担を医療機関に強いることは、医療現場に一層の混乱を与える。医療を受ける権利を人質に取りマイナンバーカードを取得させようとする手法は、国民皆保険制度を揺るがすものであり、看過できない。

 懇談した議員からは、「社会はデジタル化の方向に向かっているが、現政権に個人情報を扱わせることについての国民の信頼がないのが現実だ」「オンライン資格確認導入の義務化は法律を改定しなければできないはずだ」「マイナポイントの付与は平等性の原則に反しており、行政のとるべき手法ではない」「VPNを用いた専用ネットワークを使うから安全だと政府は強弁しているが、つるぎ町立半田病院事件ではVPN装置からランサムウェアが侵入しており、安全とは言えない」「認知症の患者にマイナンバーカードの管理や、窓口でのオンライン資格確認の手続きは不可能であり、現場を理解していないとしか思えない」「マイナンバーの利用対象が際限なく広げられている。現在の中国のような、政府に対して国民のプライバシーがない社会になってしまうことを危惧している」等、様々な意見が出た。

受診抑制を招く75歳以上窓口負担2割化

 政府は2022年10月から、年収200万円以上(単身)、年収合計320万円以上(複数世帯)の後期高齢者約370万人の医療費窓口負担を1割から2割に引き上げる予定だ。

 収入に占める医療費窓口負担の割合は、30~39歳が1・0%であるのに対し、75~79歳では3・9%、80~84歳で4・6%、85歳以上では5・9%にも及び、原則1割負担の現在でさえ、高齢者の窓口負担は過重である。

 協会が2021年に開業医会員に行った開業医実態意識基礎調査でも、75歳以上の窓口負担割合2割化導入による影響について、「受診抑制につながる」との回答が60・9%にのぼっており、高齢者の受診抑制に拍車をかけることが予想される。

 国民の生活と権利を保障することは国家の義務であり、保険医療は誰もが安心して受けられるものでなければならない。75歳以上医療費窓口負担の2割化は中止させなくてはならない。

 議員からは、「後期高齢者医療制度については、さらに国費で補填することが必要であり、2割化は中止しなければならない」「1割から2割への引き上げは当事者にとっては2倍化であり、受診抑制につながりかねない。高齢者こそ安心して受診できるような社会にしていくことが必要だ」「75歳以上の窓口負担2倍化中止法案を党として提案する予定だ」等の発言が出た。

 その他、「デジタル庁では『民間の活用』を謳っているが、自社の利益の追求に走るのではないかという懸念がある」「症状が安定しているのなら、長期処方をしてもらえばよく、リフィル処方によってメリットのある患者がどれだけいるのか疑問だ」「現政権は参院選後に窓口負担や雇用保険料等の各種負担増を狙っている。政府のこうした姿勢を選挙戦で指摘していく必要がある」等の声が挙がった。

 昼には衆議院第2議員会館で「こんな時に負担が2倍⁉『2割化は絶対!中止』」署名提出集会が保団連主催で開催され、75歳以上の医療費窓口負担2割化中止を求める署名を、出席した国会議員に提出した。

(『東京保険医新聞』2022年6月15日号掲載)