参院選2022いのち守る政治を

公開日 2022年07月08日

 
 医療・社会保障を含めた、様々な角度からの「安全

 第26回参議院議員選挙が6月22日公示、7月10日投開票の日程で行われます。

 医療・福祉・安全保障等の観点から、選挙の争点をまとめました。

医療・社会保障はいのちを守る「安全保障」

 ロシアによるウクライナ侵略を受けて、「安全保障」が参議院選挙の争点になっている。国の安全保障とは、国民の生存・生活・尊厳を様々な脅威から守り、日本国憲法第25条に規定された「健康で文化的な最低限度の生活」を送れる社会をつくることではないだろうか。

 医療・社会保障は最も身近な「安全保障」であり、コロナ禍で医療崩壊に至り、救えるいのちが日本においても多数失われたことは痛恨の極みだ。医療提供体制と保健所体制の綻び、病床削減政策の誤りなど、明らかになった問題点を早急に解決するために医療・社会保障の抜本的な拡充が急務だ。

基本診療料の引き上げを

 保険医は2年以上にわたり、地域の医療現場の最前線で感染リスクを負いながら、日常診療に携わり、新型コロナの検査・診療、ワクチン接種などを担ってきた。2022年4月に実施された診療報酬改定では、全ての医療機関を対象とした基本診療料の引き上げはまたも実施されなかった。しかも改定内容の周知期間が十分に確保されないまま改定日を迎え、すでに疲弊している医療現場にさらなる混乱をもたらした。

 診療報酬は2002年以降、累計で10%以上引き下げられている。安定して診療を継続するために、基本診療料を大幅に引き上げる政治への転換を求めたい。

オンライン資格確認の導入義務化は認められない

 政府は6月7日に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2022」(骨太方針2022)の中で、保険証の原則廃止と2023年4月から保険医療機関・薬局にマイナンバーカードを使用したオンライン資格確認の導入を義務化する方針を明記した。そのようなことを誰が決めたのだろうか。当事者の声を聞かず、医療現場の実態を無視した政策の押し付けに対して強く抗議する。マイナンバーカードは政府の思惑通りに普及しておらず、国民の不信感は強い。各政党・候補者の政策を見極めたい。

いのちを脅かす75歳以上窓口負担2割化は中止を

 参議院選挙後の10月から年収200万円以上(単身世帯)と年収合計320万円以上(複数世帯)の後期高齢者370万人について、医療費窓口負担の2割化が実施される予定だ。会員からは「2割化になる前に必要な検査・治療を行ってほしい」「負担が増えるので治療が続けられるか不安だ」など、患者から相談を受けた事例が報告されている。2割化対象者は家計に余裕のない世帯が多く、受診抑制につながることは避けられない。国民のいのちを脅かす施策は「安全保障」への逆行だ。必要な予算を削減するべきではなく、コロナ禍と円安・物価高に苦しむ高齢者への負担増は中止するべきだ。

 
 75歳以上窓口負担2割化中止を訴える中村副会長(4月21日、国会前)

防衛費の無条件増額に疑問

 ロシアによるウクライナ侵略等を受けて、骨太方針2022に「防衛力を5年以内に抜本的に強化する」方針が明記された。岸田首相は5月に実施された日米首脳会談において防衛費の「相当な増額」をバイデン大統領に対し公約した。与党からは国内総生産(GDP)比で1%ほどにおさめている防衛費を2%以上に増やすよう政府に求める提言がなされている。

 GDP比2%への倍増には、新たに約5兆円、消費税の税収に換算して税率3%分もの財源が必要になる。

 防衛費は「専守防衛」の原則に基づき、日本の周りにある具体的な危険に対応する防衛能力(装備等)を積算して決定されるべきものであり、本来GDPとは関係がない。社会保障費については必ず財源が問題とされる。それに対して、防衛費だけは財源が問題とされないことには識者からも疑問の声が挙がっている。

 防衛費に限らず、予算編成の財源を税の「応能負担」の原則に基づきどのように確保するのか、各党の政策を注視したい。

真の安全保障の確立を

 食料、エネルギー、教育など国力の尺度となる分野で、日本は主権国家として自立する必要がある。日本の食料自給率は37%(カロリーベースによる試算。2020年度農水省発表)と低迷している。食料自給をどのように実現するのか。また、テロや戦争に対して無防備な原発の稼働を続けるのか、エネルギーをどのように確保するのかも重要な争点だ。

 国際情勢の激変を受けて、国民生活を円安・物価高が直撃している。国民の生存・生活・尊厳を守る総合的な安全保障政策の議論・実現が急務だ。

 協会は東京選挙区に立候補した主要候補に政策アンケートを実施した。投票の参考にしていただきたい。

 医療・社会保障の針路に影響を与える重要な選挙だ。棄権をせず、有権者として貴重な一票を投じよう。

 (『東京保険医新聞』2022年6月25日号掲載)