[談話]算定要件の変更は「訂正」ではなく新たな通知で対応すべき

公開日 2022年07月08日

算定要件の変更は「訂正」ではなく新たな通知で対応すべき
根本的解決には告示・通知発出後に十分な周知期間の確保が必要だ

 


審査指導対策部長 浜野 博 

 

 6月15日、厚労省保険局医療課は「令和4年度診療報酬改定関連通知の一部訂正について」と題した事務連絡を発出した。同事務連絡では誤字の訂正もあるが、レセプト電算処理システム用のコードの訂正にいたっては、「医療のIT化」にとって致命的な失策だ。5月に発生した診療報酬オンライン請求システムの障害事故をはじめ、政府の主張する医療IT化自体、絵に描いた餅に過ぎないのではないだろうか。無用なレセコンや電子カルテのシステム変更を医療機関に強いることになった責任は重大である。

◆「訂正」による減点は許されない

 さらに問題なのは、重度褥瘡処置の対象を4月改定時に通知で示した「DESIGN-R2020分類d2以上」から改定前の「DESIGN-R2020分類D3、D4及びD5」に再変更した点だ。4月改定時に「皮下組織に至る褥瘡(筋肉、骨等に至る褥瘡を含む)」としているにもかかわらず「DESIGN-R2020分類d2(真皮までの損傷)以上」と通知したズレを整理したものだが、在宅医療の現場を中心に早期介入による褥瘡予防が認められたと評価する声もあった。4月以降、皮下組織に至らない損傷に対して重度褥瘡処置を算定していた医療機関に対しては創傷処置へ減点されることも考えられるが、d2以上と通知した以上はこのような減点は容認できない。

 厚労省は本事務連絡による「訂正」内容を4月1日に遡って適用する構えだが、これらは実質的に算定要件を変更しており、「訂正」とは言えない。改めて追加の課長通知を発出するべきだ。適用日についても遡及すべきでなく、追加通知の発出日以降の適用とすべきだ。

◆無理な改定スケジュールを改めよ

 そもそも、このような混乱を招いた原因は診療報酬改定の告示、通知の発出から適用までの期間が短すぎる点にある。診療報酬改定の内容は、質、量とも複雑化の一途を辿っているにもかかわらず、4月1日から適用される算定要件や施設基準を示す告示・通知が発出されるのは依然として3月上旬だ。

 今次改定では、施行直前の3月31日深夜に100ページに及ぶ一部訂正事務連絡が示され、新設のサーベイランス強化加算では届出前1カ月の実績が「不要」から「必要」に180度変更されるなど、医療現場は大混乱に見舞われた。

 厚労省がこのような誤りを連発し、厚生局が届出の可否や届出の添付書類の記載方法、新点数の解釈等について明確な回答をすることができなかったことは、端的に改定スケジュールの破綻を示している。告示、通知の発出から適用までに十分な時間があれば、このような事態は未然に防げたはずだ。

 2024年度は診療報酬と介護報酬の同時改定が予定されている。協会では診療報酬改定の告示・通知を早期に発出し、周知期間を3カ月以上確保すること、早期発出ができないのであれば施行日を告示・通知の発出日の3カ月後まで遅らせ、周知期間を十分確保するよう引き続き要望していく。

(『東京保険医新聞』2022年6月25日号掲載)