保険証 廃止の方針に抗議

公開日 2022年11月01日

2024年秋の保険証廃止 デジタル相が方針明らかに

 10月13日、河野デジタル大臣は現行の健康保険証を2024年秋に廃止し、今後マイナンバーカード(以下、マイナカード)に一本化する方針を明らかにした。

 マイナカードと健康保険証の一体化に向けた取り組みについては、6月7日に閣議決定された骨太方針2022に盛り込まれていたが、それをさらに前倒しした形だ。

 マイナカードの普及率が国民の約半数である中、健康保険証や免許証との一本化は、残りの半数へのカードの普及策なのかとの記者からの質問に対しては、マイナカードが様々なシーンで使われていくために、カードの普及が必要であるとの考えを示した。

 マイナカードの取得は、個人番号法第16条の2に規定されている通り、国民の任意とされている。「保険証がなくなれば、事実上、他の選択肢がなくなってマイナカードの義務化になるのではないか」との質問に対しては、利便性の向上を述べるにとどまった。

 加藤勝信厚生労働相は同日の記者会見で、2024年秋の健康保険証廃止方針に関し、マイナカードがない人も公的医療保険による診療を受けられるよう「丁寧に対応を検討する」と述べたが、オンライン資格確認システムの導入義務化、保険証の廃止のいずれも、マイナカード普及を目的とした強硬策であり、国民皆保険制度を利用した実質的なマイナカードの取得義務化であることは明らかだ。

国民皆保険制度はカード普及の道具ではない

 マイナカードを取得しない理由としては、メリットが感じられない、手続きが煩雑、セキュリティ上の不安などが挙げられる。これは協会が9月13日から9月28日にかけて行った会員アンケートにおいて、「オンライン資格確認への懸念」への回答として、「必要性を感じない」55・2%、「セキュリティ面の不安」が54・2%、「カード紛失・漏洩等の恐れ」が61・5%を占めたことと一致する。

 13日の会見で、河野大臣はカードリーダーの申請が医療機関の8割に及んだことに言及しているが、これは「義務化」を盾に、厚労省・支払基金・医師会による、書面や電話、オンライン請求時のアンケート等を用いた脅迫的な誘導が行なわれた結果であり、多くの医療機関が進んで申請に応じたとは言い難い。

 マイナカードの普及について、政府は当初マイナポータルはじめとした「利便性」を強調していたが、普及率は伸び悩み、2020年以降のコロナ禍の中で、2度にわたりカード新規申請者へマイナポイントを付与するキャンペーンを行った。2022年10月11日時点の申請枚数は、全国民の56%となっている。しかし、これは河野大臣自身が「邪道」と呼ぶ利益誘導政策であり、これ以上の普及には限界がある。

 また、同会見では、記者からの質問に対して国民の「理解」を求める発言が繰り返されたが、2021年の半田病院事件を挙げるまでもなく、情報漏洩やプライバシー侵害への懸念は無知に基づく不安ではなく、現実的なリスクである。

 マイナカードを利用したオンライン資格確認システムは決して国民から支持されていない。受療権を人質にしてマイナカードの取得を国民に強要する手法は許されない。

 協会は10月19日、保険証の廃止方針への抗議声明を発出した。引き続き、オンライン資格確認義務化・保険証を廃止する方針の撤回を求める取り組みを強めていく。


オンライン資格確認システム義務化撤回を求める会員署名は10月20日時点で687筆を集めている
 

(『東京保険医新聞』2022年10月25日号掲載)