保険証廃止の撤回求める

公開日 2022年12月09日

伊藤俊輔議員(衆・立憲/右)
笠井亮議員(衆・共産/右)
山添拓議員(参・共産/左)
オン資義務化・保険証廃止の危
険性を訴える吉田副会長(11月
17日、衆議院第二議員会館)

 

 協会は11月17日、国会議員要請を行い、吉田章副会長が参加した。今回は健康保険証の廃止方針とオンライン資格確認(以下オン資)の導入義務化の撤回を、全会派の東京都選出国会議員に要請した。

 当日は、伊藤俊輔(衆・立憲)、笠井亮(衆・共産)、山添拓(参・共産)各議員本人および、松本洋平(衆・自民)、宮本徹(衆・共産)、自見はなこ(参・自民)、川田龍平(参・立憲)、小池晃(参・共産)、田村智子(参・共産)、吉良よし子(参・共産)各議員秘書と面談した。

相次ぐサイバー攻撃医療情報流出の恐れ

 厚労省は2023年4月からオン資システムの導入を保険医療機関・薬局に義務化する規定を療養担当規則に盛り込む改正省令を公布しているが、導入義務化は多くの問題を抱えている。セキュリティの面では徳島県つるぎ町立半田病院(2021年10月31日)、大阪急性期・総合医療センター(2022年10月31日)などで「ランサムウェア」によるサイバー攻撃が相次ぎ、後者では電子カルテシステムの完全復旧の見通しは立っていない。オン資を導入すれば、サイバー攻撃により患者の医療情報が流出したり、診療体制に支障をきたす危険性がある。議員から「マイナカードの保険証利用は非常に危険で主張はもっともだ」「EUでは個人情報の利用に対して厳しい規則があるが、日本では政府への信頼もなく、セキュリティ面でも心配だ」など協会の主張に賛同する意見が出た。

医療現場はすでに混乱

 医療機関はシステム導入に際し、レセコンや電子カルテの改修、回線業者との契約、カードリーダーを設置するスペースの確保、高齢の患者に対するシステムの説明といった事務作業を負担しなければならない。加えて、協会が会員に対して2022年9月13日~9月28日に行ったアンケートには、「保険者による資格情報の更新が遅く、マイナカードを持ってきた患者の保険資格が確認できない」等のトラブル事例が多数寄せられ、システム導入後も受付業務の効率化につながるどころか混乱を招いている。議員からは「オン資は、災害時の対応や個人情報保護などの面で様々な問題点がある。コロナ禍で医療機関にさらなる負担を強いる義務化に断固反対だ」「マイナカードの普及や医療情報を集めることを目的とした制度ではなく、医療現場・患者の立場に立った制度をつくるべきだ」などの声が挙がった。

 同日、衆議院第二議員会館内で『保険証廃止、オンライン資格確認の義務化は中止を‼』緊急院内集会が開催され、吉田副会長が医師の立場から義務化の問題点や政府が進める医療DXの危険性について発言した。「十分な議論もなく、利活用だけが前のめりに進められており、個人にとって最も機微性の高い医療情報が危険にさらされている。患者のプライバシー侵害や医療機関へのサイバー攻撃が想定される中での義務化はありえない」と指摘した。 

 次回の国会議員要請は12月1日(木)に実施(詳細は次号)。

(『東京保険医新聞』2022年12月5・15日号掲載)