オン資導入義務化撤回 署名696筆を議員に提出

公開日 2023年01月11日

末松義規議員(衆・立憲/右から2人目)
川田龍平議員(参・立憲/右)
吉良よし子議員(参・共産/右)

 協会は12月1日、国会議員要請を行い、吉田章副会長、細田悟、水山和之両理事が参加した。全会派の東京都選出国会議員に対して、医療DXの基盤となるオンライン資格確認(以下、オン資)導入義務化の撤回と国民への負担増政策(防衛費増額のための増税検討、介護保険改悪による負担増、インボイス制度の導入、国民健康保険料の値上げ)の中止を要請し、「マイナンバーカードによるオンライン資格確認システム導入義務化の撤回を求める医師署名」696筆を議員室に届けた。

 当日は、末松義規(衆・立憲)、川田龍平(参・立憲)、吉良よし子(参・共産)各議員本人および、松本洋平(衆・自民)、伊藤俊輔(衆・立憲)、山岸一生(衆・立憲)、笠井亮(衆・共産)、自見はなこ(参・自民)、小池晃(参・共産)、田村智子(参・共産)、山添拓(参・共産)各議員秘書と面談した。

相次ぐサイバー攻撃 医療がストップする危険も

 政府は、「経済財政運営と改革の基本方針2022」(骨太の方針)において全国医療情報プラットフォームを構築し、医療情報を利活用することを企図している。その基盤となるのがマイナンバーカードによるオン資だ。厚労省は2023年4月からオン資の導入を保険医療機関・薬局に義務化する規定を療養担当規則に盛り込む改正省令を公布している。しかし、①患者の医療情報漏洩の危険性、②医療機関での導入状況、③導入による事務・費用負担等、多くの問題点がある。

 セキュリティの面では徳島県つるぎ町立半田病院(2021年10月31日)、大阪急性期・総合医療センター(2022年10月31日)など、「ランサムウェア」によるサイバー攻撃が相次いでいる。オン資を導入すれば、このようなサイバー攻撃により患者の医療情報が流出し、診療体制に支障をきたす危険性がある。議員からは「全国医療情報プラットフォームが現実化した場合、医療情報が収集される。そうなればサイバー攻撃の対象とされるリスクは飛躍的に高まり、患者情報が漏洩する可能性も皆無ではない。医療情報の収集や情報漏洩を不安視する患者は、受診をためらうだろう」「ランサムウェアによるサイバー攻撃が相次ぐ状況で、オン資を導入することは危険だ。しかもマイナポータル利用規約には、デジタル庁はシステム利用により生じた損害に対して一切の責任を負わないことが記載されている。あまりにも無責任だ」など協会の主張に賛同する意見が出た。

23年4月からの導入義務化は非現実的

 2022年8月10日の中医協答申書附帯意見では、「2022年末頃の導入の状況について点検を行い、地域医療に支障を生じる等、やむを得ない場合の必要な対応について、その期限も含め、検討を行うこと」とされているが、11月27日時点の運用開始率(医科診療所)は25・0%にとどまっている。

 議員からは「オン資を導入できない医療機関に対し療養担当規則違反で、保険医取り消しの対象になり得るとするのは、あまりにも強引だ。コロナ禍であり、各医療機関の状況や事情も考慮するべきだ」「メーカーのカードリーダー生産終了や配線工事の遅れにより補助金を受け取れない医療機関が続出する恐れがある。システムの維持費は医療機関の持ち出しであることも非常に問題だ」等、2023年4月からの導入義務化を疑問視する指摘があった。

国民負担増の計画は中止を

 政府はコロナ禍や物価・エネルギー価格の高騰に苦しむ国民に対して、防衛費増額のための増税、介護保険改悪による負担増、インボイス制度の導入、国民健康保険料の値上げを検討している。

 議員からは「日本経済を支えているのは個人消費であり、負担増は経済停滞に繋がる」「防衛費を増額しても、国内総生産は増加しない。介護報酬をプラス改定することで、長期的に働き続けられる職場環境を整えることが、国内総生産の増加にも資するだろう」などの声が挙がった。

(『東京保険医新聞』2022年12月25日号掲載)