[声明]安保3文書の閣議決定」と「防衛費2倍化」は撤回を 「専守防衛」を堅持し、社会保障費を拡充することを求めます

公開日 2023年01月30日

2022年12月23日

内閣総理大臣 岸田 文雄 殿

 

           東京保険医協会
会   長  須田 昭夫

政策調査部長   吉田 章

「安保3文書の閣議決定」と「防衛費2倍化」は撤回を

「専守防衛」を堅持し、社会保障費を拡充することを求めます 

  

 政府は2022年12月16日、安保3文書を閣議決定し、歴代政権が違憲としてきた敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有等を明記した。三権分立を定めた日本国憲法を無視し、閣議決定によって政策を決定する政治手法は立憲主義の否定である。まずもって、国会審議も経ずに、国民的議論もなく日本国憲法に基づく国是である「専守防衛」を逸脱した安保政策の大転換を行ったことに厳重に抗議する。

 そもそも、防衛費2倍化と敵基地攻撃能力の保有等により、日本の安全が高まるのか疑わしい。有事の際、最も脅威となる日本国内の原子力発電所は放置されたままだ。日本が軍備増強に舵を切れば、周辺国の不安をかき立て、緊張が激化し、際限のない軍拡競争が起こる。誤認による偶発戦争すら起こりかねない。政治の役割は戦争を未然に防ぐことにあり、周辺国と対話する外交努力により平和を構築することではないか。軍拡競争ではない外交プランが今こそ求められている。日本国憲法の基本原則である平和主義を放棄し、平和国家としての矜持である「専守防衛」を形骸化させる政府方針を深く憂慮する。

 岸田文雄首相は12月5日、2023年度から27年度の5年間の防衛費総額について約43兆円とし、GDP比2%に相当する防衛費を年約11兆円とし、従来のGDP比1%からの2倍化を指示した。現行の中期防衛力整備計画(19〜23年度)の27兆4700億円程度から1.5倍超の規模となる。

 12月16日に発表された「2023年度与党税制改正大綱」には、「防衛費強化に掛かる財源確保のための税制措置」が明記され、法人税・所得税・たばこ税などの増税方針が盛り込まれた。今後、防衛費2倍化の財源を確保するために、社会保障費をはじめ、他の予算の大幅削減と国民負担増が強行される危険性がある。

 歴史的な物価高・燃料費高騰の中で、10月には後期高齢者の一部に対する医療費窓口負担2倍化が強行された。介護保険利用料の2割負担対象者を拡大するなどの給付減・負担増も進められようとしている。社会保障費削減を既定路線とする一方で、人を殺める戦争につながる軍備増強に血税を注ぎ込み、防衛費2倍化を推進する政府方針には大きな矛盾があり、認めることが難しい。

 医療・介護・福祉を支える社会保障費は、国民のいのちと健康を守るために最優先して確保されるべき「安全保障」の経費だ。われわれは国民のいのちと健康を守る医師集団として、憲法第25条第2項(「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」)に基づき、「公助」としての社会保障を拡充する路線へ転換することを政府に強く求める。

 

以 上

声明「『安保3文書の閣議決定』と『防衛費2倍化』は撤回を 『専守防衛』を堅持し、社会保障費を拡充することを求めます」[PDF:124KB]