公開日 2023年02月08日
2023年1月20日
東京保険医協会
会 長 須田 昭夫
政策調査部長 吉田 章
日本学術会議の在り方を変質させる法改正の方針に強く抗議します
内閣府は2022年12月6日に「日本学術会議の在り方についての方針」を発表し、日本学術会議の会員選考過程において「第三者の参画」などの措置を講じることが明記されました。同日の後藤茂之内閣府特命担当大臣の記者会見では、選考過程に関与する第三者委員会の設置を含めた法改正が準備され、次期通常国会への法案提出が予定されていると説明されました。
政府が2022年12月16日に閣議決定した「安保3文書」のひとつである国家安全保障戦略には、「国家安全保障を支えるために強化するべき国内基盤」として「安保分野における政府と企業・学術界との実践的な連携」が挙げられています。連携と称した介入によって、軍事研究を否定してきた学術会議を政府に追随する組織に変質させる狙いを持っていることは明白です。日本を軍事国家へと導く政策を推し進めるために学術会議を形骸化させることは看過できません。
日本学術会議は、「科学の向上発達を図り、行政、産業及び国民生活に科学を反映浸透させること」を目的とし、政府から独立して職務を行う「特別な機関」として設立されています。国内外の政治・社会情勢に関わらず、独立した立場から科学に関する重要事項を審議することで、政府・社会に科学者の意見を提言する役割を果たしてきました。当会は日本学術会議が2022年12月21日に発表した声明「内閣府『日本学術会議の在り方についての方針』について再考を求めます」を全面的に支持します。政府が設置を画策しているのは、第三者委員会とは名ばかりの政府の「下請け機関」に相違ありません。そのことは、政府が会員選考に介入した事実からも明らかです。仮に会員選考に関する第三者委員会が設置されれば、これまで堅持してきた日本学術会議の独立性が損なわれ、存在意義すら危ぶまれるおそれがあります。
今回の方針については、当事者である学術会議との議論は十分に行われず、内閣府による一方的な発表がなされています。学術会議の在り方に関してはこの間、自主的な議論・改革が進められている中で、政府による今回の法改正の具体的な必要性は全く示されていません。政府は来年度の法改正による会員選考を可能な限り早期に実施するため、現会員の任期の延長さえ行おうとしています。そもそも2020年9月、菅義偉内閣総理大臣(当時)によって行われた違法な日本学術会議会員候補の任命拒否こそ、速やかに是正されるべきです。違法行為を行った政府がこのような強権的な手法をとることは許されません。学術会議の在り方は、丁寧な議論と国民的な合意の上で決定されるべきです。
当会は、国民のいのちと健康を守る医師集団として、また医療を専門とする科学者集団として、日本学術会議の在り方を変質させる法改正の方針に対し強く抗議し、撤回を求めます。
以 上
声明「日本学術会議の在り方を変質させる法改正の方針に強く抗議します」[PDF:153KB]