[声明]レセプトオンライン請求「義務化」強要方針に対し、強く抗議し撤回を求めます

公開日 2023年03月30日

2023年3月30日

内閣総理大臣  岸田 文雄 殿
厚生労働大臣  加藤 勝信 殿
デジタル大臣  河野 太郎 殿

 

           東京保険医協会
会   長  須田 昭夫

審査指導対策部長   浜野 博

 

レセプトオンライン請求「義務化」強要方針に対し、
強く抗議し撤回を求めます

 

 

 

 厚労省は3月23日に開催された社会保障審議会医療保険部会において、「オンライン請求の割合を100%に近づけていくためのロードマップ案」を提示しました。その内容は、2024年4月以降の光ディスク等による請求の新規適用は終了し、現在レセプトを光ディスク等で請求している医療機関については2024年9月末までに、オンライン請求を原則「義務化」するというものです。4月以降も光ディスク等による請求を継続する医療機関に対しては移行計画の提出を求め、1年単位の経過措置とされます。一方、紙レセプトでの請求については、レセコン未使用時の新規適用を2024年6月で打ち切り、6月以降も紙レセプトで請求するためには当初の要件を満たす旨の届出を改めて求める、という計画です。「義務化」のために2023年度中に診療報酬に関する請求省令を改正するとしています。

 

 しかし、レセプト請求権に対する新たな義務を法律ではなく、省令で直接課すことは「国会を唯一の立法機関」と定めた憲法41条に違反し、違憲であり無効です。

 

 法律によらず、省令で新たな義務を課す厚労省の手法については、2009年から2010年にかけて約2,200人もの医師、歯科医師が原告となって争われたレセプトオンライン請求義務化撤回訴訟や、現在も東京地裁で係争中のオンライン資格確認義務不存在確認等請求訴訟でも繰り返し違憲・違法性が争われています。国民的議論や国会審議を経ず、閣議決定により諸政策を強行する政治は三権分立の破壊に他なりません。政策実現のために省令で義務を課す違法行為そのものに対し強く抗議します。

 

 そもそも、政府がオンライン請求「義務化」を目指す理由は審査・支払業務の円滑化とのことですが、光ディスク等による請求の場合であってもレセプトデータはオンライン請求の場合と同様にデータ化されており、審査上の差異はありません。レセプトオンライン請求義務化を撤回した際に厚労省自身が「電子媒体による請求であっても医療保険事務の効率化、医療サービスの質の向上等の政策目標は達成可能」と述べており、光ディスク等による請求を認めない理由にはなりません。

 

 東京では光ディスク等による請求を行っている医療機関が医科で19.0%、歯科では65.0%、紙請求を行っている医療機関が医科で3.4%、歯科では9.9%(いずれも医療機関数ベース)存在します。医療現場からはオンライン請求に移行した際のセキュリティに対する懸念から、自らの診療データをオンラインで接続することを望まない患者への配慮を望む声が寄せられています。厚労省自身が行ったアンケートでも、2023年度中にオンライン請求に移行する「予定はない」が47%あり、移行に要する期間が1年以上かかるとの回答が60%を占めています。レセコン未使用のために紙請求を行っている医療機関ではオンライン請求に移行する「予定はない」との回答が92%に達しています。

 

 医療機関の現状を無視し、診療報酬の請求方法を一つに限定するレセプトオンライン請求「義務化」を強要する方針に対し、強く抗議するとともに、即時撤回を求めます。

 

以 上

【声明】レセプトオンライン請求「義務化」強要方針に対し、強く抗議し撤回を求めます[PDF:163KB]