オン資「義務化」撤回訴訟 二次提訴で原告1075人に

公開日 2023年05月10日

 4月21日、「オンライン資格確認義務不存在確認等請求訴訟」の第一回口頭弁論が東京地裁(岡田幸人裁判長)419号法廷で開かれた。被告である国は原告の「請求棄却」を求め、審理が始まった。


第一回口頭弁論の概要と訴訟の趣旨について解説する喜田村洋一弁護士(写真左)、佐藤一樹原告団事務局長(写真中央)、二関辰郎弁護士(写真右)(4月21日、司法記者クラブ)

国に答弁書の提出求める 第二回は6月29日開催

 行政訴訟の場合、国は訴え自体を「却下」する申し立てをすることが多いが、今回は「請求棄却」を求めた。当日、国が提出した答弁書は簡易なものであったことから、裁判長は実質的な答弁書の提出期限を6月20日と指定した上で、第二回口頭弁論については6月29日に開催することが決まった。

 近年、審理がオンラインで行われるケースも増えているが、原告は事案に鑑み対面で裁判を進めることを希望し、国も同意したことから今後も審理は法廷で行われることとなった。また、原告から第二次訴訟を第一次訴訟と併合するよう要望し、裁判長は「検討する」と応じた。

第二次訴訟を提訴 原告は計1075人に

 同日午前中、全国の保険医・歯科保険医801人は、「オンライン資格確認義務不存在確認等請求訴訟」第二次原告団を結成し、国を相手に東京地方裁判所に提訴した。保団連、全国の協会・医会が訴訟への協力を会員に呼びかけ、第一次原告団274人と合わせて1075人の原告団となった。

保険証廃止 国民は望まず

 口頭弁論の後、原告団は司法記者クラブで記者会見を行い、12社が参加した。

 国が訴えの却下ではなく、請求棄却を求めたことについて、弁護団の喜田村洋一弁護士は、「国は門前払いをしなかった。本件については、中身の勝負をするということだ。実質上の答弁書の内容が期待される」と述べた。

 二関辰郎弁護士は訴訟の趣旨について、マイナンバーカードを用いたオンライン資格確認等システムの導入義務化を、省令である「療養担当規則」によって定めたことは、健康保険法の委任を欠き、仮に委任があると解釈しても委任の範囲を逸脱していると解説した。

 原告団事務局長の佐藤一樹理事は、国が産業界を含めた医療情報の利活用を計画しており、NTTの回線を用いたオンライン資格確認等システムの導入義務化や保険証の廃止によるマイナ保険証への一体化はその基盤となること、個人の医療情報が民間企業等によって営利目的で使用される危険性等について解説した。

 医療界のセキュリティは脆弱で、2022年には39件の漏洩事件が起こっている。しかし、マイナポータル規約は、個人が被った損害に対しデジタル庁を免責する内容であり、国は責任を負わない姿勢をとっていると指摘した。

 3~4月にかけて協会が独自に行った患者アンケートでは、医療情報が流出する危険性について「心配する」との回答が約81%、保険証の廃止について「反対」が70%となったことを報告した。「デメリットを理解していれば、多くの国民は保険証の廃止を望まない」と述べた。

原告団結成集会 全国から100人超参加

 4月27日には国会内で「オンライン資格確認義務不存在確認等請求訴訟」第二次訴訟原告団結成集会を開催し、会場約100人、Webから90カ所の参加があった。原告に加わった保険医・歯科保険医が全国から多数結集した。


第二次訴訟原告団結成集会の模様
(4月27日、衆議院第二議員会館)

※集会の詳細は5月25日号に掲載予定

(『東京保険医新聞』2023年5月5・15日合併号掲載)