[視点]入管法改悪反対!NO!の先にある社会①

公開日 2023年07月06日

入管法改悪反対!NO!の先にある社会①
労使対等原則が担保された多民族・多文化共生社会へ

                      

移住者と連帯する全国ネットワーク 共同代表理事 鳥井  一平

入管法改悪NO! 国会前シットイン

 4月14日の衆議院法務委員会での審議入り以来、国会前でのシットインを6月9日まで18回行った。その都度、参加者と一緒に「入管法改悪NO!」「入管法改悪反対!」の声を大きく上げた。法務委員会の部屋にまで届いていたようではあった。国会前シットインは、全国各地で、時にはひとりであっても、スタンディング、シットインに取り組む人々の入管法改悪反対!の声がつながりあう「ひろば」となっていた(全国145カ所、6月19日現在。児玉晃一弁護士調べ)。また、入管法改悪反対署名は2年前の倍以上の22万3242筆(6月8日現在)が寄せられた。しかし。

「入管法改正案」の可決成立

  6月9日、立法事実が審議過程で悉く崩れた「入管法改正案」が参議院本会議で可決成立した。市民社会が求める入管法改正案、難民等保護法案(立憲民主、共産、社民、れいわ、沖縄の風の野党共同提案)に対しては真摯な審議が行われなかった(審議経過は下表参照)。

 今回の入管法改悪は、戦後一貫した、外国人を監視・管理するという入管政策、歪んだ「移民政策」のひとつの答えであろう。一方で、政府は外国人技能実習制度と特定技能の見直し論議を進めており、受入れ拡大と監視・管理強化のセットでの政策を進めるという政府の姿勢が示されている。

 また、少し角度を変えて見れば、すでに始まっている移民社会と受入れ拡大の政策方向の中で、入管庁が自らの存在を誇示するために、ありもしない危機感※1を煽り、扇動したのが今回の入管法改悪である。まさに入管庁のためだけの入管法改悪に国会は踊らされたのである。

 これが長年にわたり現場で外国人労働者や非正規滞在者、外国籍の住民、子どもらを支援してきた者としての実感である。

※1 例えば、前科、前歴の差別を煽り「外国人は犯罪者」との印象操作が行われた。

 

「人口減少社会」と「受入れ論議」

 2018年秋の臨時国会で、受入れ論議は沸騰した。そして、入管法改正を経て、2019年4月に新たな在留資格「特定技能1号・2号」がスタートした。同時に入管局が法務省外局の入管庁に昇格した。超ハイスピードで、ことは進んだ。私自身も衆議院法務委員会での参考人として意見陳述したが、通過儀礼との違和感を抱いた。

 少子高齢化、人口減少社会による労働力不足が、オリンピック・パラリンピックの2020年東京開催(実際は2021年)と復興問題を口実に、更に加速度的に顕在化したことが「2018年受入れ論議」となったのである。当時、メディアは一斉に、「政策の大転換」、「有史以来の初めての外国人労働者受入れ」などと安倍政権の「新たな外国人材受入れ」と報道していた。

 ただ、実はすでに約40年前から少子化は始まっており、「労働力不足」の進行は明らかとなっていた。それがとりもなおさず「外国人労働者問題」であった。外国人労働者問題は「受入れ論議」となり、一度は人口減少社会への危機感のもと、「2006年受入れ論議」から「2008年受入れ論議」へと熟成していった。しかしその後、リーマンショックと民主党への政権交代で論議は中断し、偏狭な「外国人嫌い」の安倍政権下で完全に押しつぶされていた。

 ただ、安倍政権が、外国人労働者を「外国人材」に言いかえようとも、労働者(力)不足の事態は深刻に進行し、外国人労働者の受入れは、技能実習生や留学生と言った偽装受入れ=使い捨て労働力として、この社会に深く広がってきていたのである。
(次号に続く)

(『東京保険医新聞』2023年7月5日号掲載)