オン資マニュアル改訂 未収金発生の恐れも

公開日 2023年07月06日

「本人確認のみで3割受領」の記載

 マイナンバーカード(以下、マイナカード)やオンライン資格確認のトラブルが連日報道される中、6月2日に「オンライン資格確認等システム運用マニュアル」が改訂された。

 同マニュアルは支払基金と国保中央会がまとめているもので、改訂されたのはQ&Aの内容である。

 「マイナカードでの資格確認の結果、資格を喪失しているなど有効な資格が存在しない」場合の対応として、6月1日以前のマニュアルでは「新資格の健康保険証又は保険者の証明書が提示されない場合は、患者からは10割分を受領してください」としていたが、6月2日改訂版では「マイナカードの券面に記載された生年月日情報に基づいて自己負担分(3割負担等)をお支払いいただき、事後に正確な資格情報の確認ができた段階で、訂正の必要がある場合には、所要の手続を行っていただくことが考えられます」に変更された。

 元々、オンライン資格確認においては、最新の資格情報が反映されるまでにタイムラグがある他、機器の不具合や登録の不備等のために、窓口で患者の保険資格が確認できないトラブルが頻発しており、6月1日以前のマニュアルに従い患者に10割負担を求めるケースも発生していた。

 協会が5月25日~6月5日にかけて行ったオンライン資格確認のトラブル事例会員アンケートでも、回答のあった全691医療機関のうち、「被保険者情報が正しく反映されていなかった」事例を265件、「カードリーダーまたはパソコンの不具合によりマイナ保険証を読み取りできなかった」事例を165件が経験しており、その対応として一旦10割を患者に請求した経験があるとの回答は51件に及んでいる。

 

資格確認の厳密性崩す改訂

 6月20日に加藤厚労相は、「保険料を支払っている患者については、登録情報がその場で確認できない場合でも、本人確認を行った上で、患者の窓口負担が3割までとなるよう対応策を今月中に決定し、医療機関に周知したい」と述べた。同マニュアルの改訂は厚労省の方針に合わせて行われたものと考えられる。

 しかし、そもそも「本人確認」と「資格確認」は異なるものであり、機器に不具合があった場合、マイナカード単体で可能なのは本人確認のみである。マイナカードでの本人確認を基に3割を受領したが、その後実際は資格を喪失していることが明らかになった場合、残りの7割分の支払いを医療機関が受けられない可能性が生じる。6月15日に立憲民主党が開いたヒアリングで、保団連が厚労省にこの点について質問したが、「調整中」だとして、明確な回答はなかった。

 改訂版のマニュアルも「~ことが考えられます」と、あたかも判断を医療機関に委ねて自己責任とするような表現に差し替えられた。医療機関に対応の負担が押し付けられる危険性があり、注視が必要だ。

 今回のマニュアル改訂は、資格確認の厳密性を損なうものである。医療機関としては、従来通り資格確認できなければ、患者から一旦10割分を受領する扱いを続けるのが妥当だろう。

保険証を使えば問題は生じない

 重要なのは、オンライン資格確認をめぐる種々のトラブルも、マイナカードの本人確認のみで3割受領することによる未収金発生のリスクも、従来の保険証を使っていれば起こらなかったものだという点だ。

 厚労省は6月29日、「マイナ保険証」の不具合によって患者が「無保険扱い」となる問題を巡り、備えとして従来の健康保険証も一緒に医療機関に持参するよう呼びかける方針を明らかにした。ついに厚労省自身が、健康保険証での受診を呼びかけている協会と同様の主張をする事態に至っている(詳報は次号)。

 しかし、それならば最初から従来の保険証で資格確認をすれば良く、わざわざ不具合の危険性があるマイナ保険証を、医療機関窓口で取り扱わせる手間を強いるのは不合理である。

 協会は、保険証の存続とオンライン資格確認義務化の中止を求める取り組みを強化していく。

(『東京保険医新聞』2023年7月5日号掲載)