オン資「義務化」撤回訴訟 第二回口頭弁論 国が書面提出 主張が明らかに

公開日 2023年07月26日

 6月29日、「オンライン資格確認義務不存在確認等請求訴訟」(原告1075人)の第二回口頭弁論が東京地裁(岡田幸人裁判長)で開かれた。須田昭夫原告団長をはじめ、原告8人が原告席で審理に臨んだ。

 口頭弁論では、国から示された準備書面に対し、原告側が8月末までに準備書面を提出し、第三回口頭弁論は9月12日に開かれることが決まった。口頭弁論の後、原告団は弁護士会館で記者説明会を行い、8社が参加した。


口頭弁論後に行われた記者説明会では、各社から主な争点や今後の展望、原告団の規模など、様々な質問が出た(6月29日、弁護士会館)

法律による委任の有無と範囲が争点

 国は準備書面の中で、保険医療機関等が行う「療養の給付」は公法上の契約であり、受給資格の確認等、保険診療に係る一連の事項を併せて実施することが当然に求められることから、健康保険法70条1項は、これらの事項についても省令である療養担当規則に広く委任しており、オンライン資格確認の原則義務化は違法・違憲ではないと主張している。

 しかし、健康保険法は、公法上の契約について一律に省令に委任しているのではなく、委任するか否か、また委任する場合の範囲については、あくまでも個々の条文を通じて定めている。

 弁護団の主任代理人である喜田村洋一弁護士は、「法律全体を読めば個別の論点についても委任したことになる、という国の主張には無理がある」と指摘し、この点が国の主張に対する反論の主眼だと述べた。

オン資のトラブルが続出

 準備書面において、国は、オンライン資格確認システムの導入によるメリットを強調する一方、原則義務化に伴う医療機関等の負担は、受給資格の確認に係る体制整備等にとどまり、限定的なものだと主張している。

 しかし、協会が実施した「オンライン資格確認システムトラブル事例アンケート」では、オンライン資格確認を実施している医療機関の66・5%でトラブルが発生し、対応に多大な労力を割かれているのが現状だ。義務化の前提となるオンライン資格確認システム自体が信頼性に乏しく、欠陥を抱えていることが明らかになっている。

 記者説明会では、導入義務化の実施により閉院に追い込まれた医療機関の事例や、個別指導を活用してオンライン資格確認の体制整備を求められている実態も指摘した。

 喜田村弁護士は、「国の主張は、法律論としても、保険医療機関等への多大な負担という事実認識の面でも間違っていることを、準備書面で明らかにしていきたい」と決意を述べた。

 須田原告団長は、「現在、提訴に向けて準備を進めている第三次訴訟と合わせると1300人を超える原告団になる見込みだ」との展望を述べた。

 記者説明会に参加した原告医師がひとりずつ発言し、「テナントの許可が得られなければ、回線工事が物理的に不可能な医療機関もある」「セキュリティ対策の負担が医療機関に押し付けられているが、医療機関で行える対策には限度があり、求められるセキュリティが確保できない」「認知症などの患者にはマイナンバーカードの管理は不可能だ」「自分自身マイナカードを所持していない。強制される理由が理解できない。徹底して対抗したい」など、それぞれが訴訟に加わった思いを語った。


記者説明会に参加した原告医師たちは、訴訟にかける自身の思いや医療現場の実態を語った(6月29日、弁護士会館)

(『東京保険医新聞』2023年7月15日号掲載)