公開日 2023年08月03日
厚労省は3月23日に開催された社会保障審議会医療保険部会において、光ディスクなどの電子媒体でレセプト請求を行う医療機関に対して、2024年9月までにレセプトオンライン請求に移行することを実質上義務付ける計画案を示した。
これを受け、協会はレセプトオンライン請求「義務化」アンケートを実施した。6月26日に会員医療機関3970件にFAXでアンケートを送付し、7月7日までに都内476件の医療機関から回答を得た(回収率12・0%)。
集計の結果、回答があった医療機関のうち74・9%がレセプトをオンラインで請求(以下、オンライン請求)しており、23・6%が電子媒体による請求(以下、電子媒体請求)、レセコンで紙レセプト請求している医療機関は0・2%、手書きレセプトによる請求(以下、手書き請求)は1・3%であった(図1)。
「義務化」反対が44%
厚労省が示したレセプトオンライン請求「義務化」方針についての賛否を問う設問に対しては、「賛成」が9・6%、「反対」が44・8%、「どちらともいえない」が45・6%であった(図2)。
このうち、オンライン請求以外の医療機関では「賛成」はなく、「反対」が82%、「どちらともいえない」が16%、無回答が2%、オンライン請求医療機関では「賛成」13%、「反対」が31%、「どちらともいえない」56%であった。
既にオンライン請求を行っている医療機関であっても「義務化」賛成は13%にとどまり、半数以上が懐疑的な意見であった。
電子媒体請求医療機関8%が廃業の危機
オンライン請求に対する懸念を問う設問に対しては「導入後のシステムメンテナンスや故障時の対応が不安」「セキュリティが不安(患者情報の漏洩等)」「ランニングコストが負担」を挙げる意見が、オンライン請求の実施の有無にかかわらず上位を占めた(図3)が、電子媒体請求医療機関では「現在の請求方法で不便を感じない」が最多であった。「義務化されると廃業せざるを得ない」との回答は電子媒体請求医療機関の8%に相当する9件から寄せられた。手書き請求している医療機関からは4件、66%に達している。
オンライン請求「義務化」必要ないとの声多数
政府のオンライン請求「義務化」方針についての自由記述欄には、オンライン請求医療機関からも、オンライン請求の利便性は認めながらも「義務化」は必要がないとの意見が多数寄せられた(下表参照)。
また、オンライン請求に対応できないために閉院・廃業する医療機関が現れることを危惧する意見や、オンライン請求ができるようサポートが必要だとする意見、将来の標準電子カルテ義務化を見据えた患者情報の漏洩を危惧する意見のほか、診療報酬の引き上げや早期支払い等の改善を要望する意見もあった。
オンライン請求「義務化」はただちに撤回を
すべての医療機関において、オンライン請求に直ちに移行できる環境が整っているとはいえない現状が浮き彫りとなった。
過去には2009年にレセプトオンライン請求義務化撤回訴訟が起こり、厚労省は一度義務化を撤回している。その際、厚労省は「電子媒体による請求であっても、医療保険事務の効率化、医療サービスの質の向上等の政策目標は達成可能である」と回答していたはずである。
協会は、医療機関の現状を無視し、診療報酬の請求方法を一つに限定するレセプトオンライン請求「義務化」に対し強く抗議するとともに、即時撤回を求めていく。
(『東京保険医新聞』2023年7月25日号掲載)