オンライン資格確認 義務“不存在”確認求め提訴

公開日 2023年03月06日

 東京保険医協会が呼びかけた保険医・歯科保険医274人は2023年2月22日、「オンライン資格確認義務不存在確認等請求訴訟」第一次原告団を結成し、国を相手に東京地方裁判所に提訴した。同日、原告団代表の須田昭夫東京保険医協会会長と弁護団代表の喜田村洋一弁護士(ミネルバ法律事務所)ら、役員・弁護団8人は司法記者クラブと厚生労働記者会で記者会見を行った。

記者会見の概要

 須田昭夫会長は、オンライン資格確認(以下、オン資)義務化に伴い、廃業を決定・検討している医師がいる現状を踏まえ、地域医療にとって大きな損失であり、医療の本質とかかわりのない資格確認の方法によって廃業に追い込まれることがあってはならないと指摘した。義務化を定めた療養担当規則が違憲・違法であることが判明したため、提訴を決断したと述べた。

 2月5日時点のマイナンバーカードの交付枚数が約7,630万枚(人口比60.6%)、健康保険証としての利用登録が4,526万1,226枚(カード交付枚数に対する割合59.3%)であることから、マイナンバーカードによるオン資等システムは未完成であり、患者の大半に普及しているとは言えない状況にあると指摘した。医科診療所における資格確認方法の累計(2023年1月分)は、保険証2,289万7,396件、マイナンバーカード38万511件であり、マイナカードによる件数は保険証による件数の約1.7%にしか過ぎない。このような医療現場の実態を踏まえ、義務化の不当性を訴えた。

 また、ランサムウェアなどのコンピューターウイルスによる医療機関への攻撃が相次いでいる現状から、オンライン資格確認システムを利用しインターネット回線に接続することにより、カルテ情報等の漏洩の危険が生じているとした。その上で、患者の個人情報を守ることができなくなり、医師の守秘義務がないがしろにされている点を指摘した。政府が進める「医療DX」はオンライン資格確認システムを「全国医療情報プラットフォーム」の基盤としており、患者の医療情報を国が収集・管理しようとしている。本当に医療を良くするための政策なのか疑問があるとした。

 弁護団は、請求の趣旨の概要を説明し、オンライン資格確認義務化の違憲・違法性を訴えた。

(1)健康保険法による委任の範囲の逸脱

 健康保険法70条1項が、厚生労働省令(療養担当規則)に委任しているのは、「療養の給付」であり、被保険者の「資格確認」方法については委任の内容に含まれていない。健康保険法の委任がないにもかかわらず、保険医療機関に対して省令でオンライン資格確認を義務づけているのは、憲法41条に違反し、違法かつ無効なものであると指摘した。

 また、仮に健康保険法からの委任があると解釈しても、改正後療養担当規則は健康保険法の委任の範囲を逸脱してオンライン資格確認を義務化するものであり違法であると主張した。

(2)原告らの医療活動の自由に対する権利侵害

 保険医である原告らの医療活動は、職業活動の自由(憲法22条1項)という側面だけでなく、国民の生命・健康を支える点で国民の生存権(憲法25条)にも深く関連している。また、療養の給付や資格確認をどのように行うかということは患者のプライバシー権(憲法13条)とも密接に関連する。このように、保険医である原告らの医療活動は、単なる職業活動の自由にとどまらない、国民の生命・身体・財産等の権利保障を含む憲法上の権利であるとし、オンライン資格確認の義務化は、このような原告らの憲法上の権利を侵害しており、違憲・無効であると指摘した。

 記者会見にはマスコミ約20社が出席し、活発な質疑応答が行われた。

(『東京保険医新聞』2023年3月5日号掲載)

関連ワード