国会行動 保険証存続・診療報酬引き上げ求める

公開日 2023年11月10日

宮本徹議員(衆・共産/中央)
山添拓議員(参・共産/中央)

 協会は10月19日、国会議員要請を行い、須田昭夫会長、細田悟理事が参加した。

 ①現行の健康保険証を存続させること、②2024年度診療報酬改定において基本診療料を10%以上引き上げること、③新型コロナウイルス感染症に対する治療の公費負担・特例措置の復活の3点を求めた。

 宮本徹(衆・共産)、山添拓(参・共産)両議員本人と面談した他、末松義規(衆・立憲)、伊藤俊輔(衆・立憲)、川田龍平(参・立憲)、田村智子(参・共産)、吉良よし子(参・共産)、小池晃(参・共産)、天畠大輔(参・れいわ)各議員秘書と面談した。

現行の保険証存続は国民の要求

 協会は、9月開会の都内各区市町村議会に「健康保険証を存続するように国に意見書の提出を求める」請願・陳情を提出する取り組みを進めてきた。10月30日時点で、23区の渋谷区と三多摩地域では三鷹市・武蔵野市・調布市・東村山市・国立市・小金井市の北多摩6市の議会において、委員会審議で協会の請願・陳情が採択され、そのうち調布市と小金井市では本会議において、協会の陳情が採択され、国に対して健康保険証の存続を求める意見書がそれぞれ可決・提出された。

 マイナ保険証の全国利用率は、オンライン資格確認の義務化が開始された2023年4月の6・30%から8月の4・67%へと4カ月連続で減少している。オンライン資格確認の利用件数自体は増えているにもかかわらず、マイナ保険証の利用率・利用件数が減少していることは、資格確認の方法としてマイナ保険証が患者・国民・医療機関から信用されていないということを示している。健康保険証の存続は国民の切実な要求となっている。

 議員からは「保険証廃止はこの臨時国会で最優先で追及すべき問題だ」「地元の有権者から保険証を無くさないでほしいと一番に言われる。保険証が無くなると困る人がたくさんいることを感じている」「当面の間、資格確認書を一律に送付するとしたことは、政府が追い詰められていることの現れだが、資格確認書の発行自体が無駄な手続きや費用負担を生じさせるものであり、現行の保険証を残すべきだ」「マイナンバーと障害者手帳の紐づけミスにより、障害者の個人情報が漏洩した事例がある。マイナカードの申請手続きも障害者にとっては壁になっており、障害者は政策によって被害を受けている」などの意見が出た。

診療報酬引き上げは待ったなし

 診療報酬は2002年以降、累計で10%以上引き下げられてきた。総務省発表の消費者物価指数を2004年平均と2023年8月時点で比較すると、総合指数で10・9%、食料指数で30・9%上昇している。前年同月比で、2023年8月の消費者物価指数は3・2%、国内企業物価指数は3・2%上昇している。公定価格であり価格転嫁できない診療報酬の性質上、この間の記録的な物価高騰に対応した診療報酬の臨時改定が行われるべきだ。医療人材の確保・従業員への賃上げの観点からも、その原資である診療報酬の引き上げは待ったなしの状況である。

 ①国民に安全な医療を提供するため、基本診療料を10%以上引き上げること、②必要な医療が受けられるよう、患者窓口負担を軽減することの2点を求める医師会員署名561筆を提出した。

 議員からは、「医療業界の社会的な影響力は大きい。診療報酬を上げれば、院内のスタッフの賃上げ以外にも、周辺の事業者への波及効果も期待できる」「物価が上がっているのに、その分の賃金が上がっていない。これまでのコストカット型の経済が間違っていたと首相は言い出しているが、今までの経済政策の総括を行っているとは言い難い」等の意見が出た他、「2024年度の診療報酬改定において、実施まで2カ月の猶予が設けられたのは、協会の運動の重要な成果だろう」との意見も出た。

新型コロナ公費・特例の存続を

 厚労省は新型コロナの診療報酬特例措置について、9月15日に事務連絡を発出し、10月1日から点数・公費の取扱いが変更され、特例の多くが減額・廃止された。また、これまで全額公費負担とされていた新型コロナ治療薬についても、3割負担9千円、2割負担6千円、1割負担3千円の窓口負担が求められることとなった。

 国内の流行が第9波を迎える中での特例の大幅縮小は、患者と医療機関の双方に大きな影響がある。重症化や後遺症を防ぐためには、医療機関への早期受診が重要であり、公費負担の範囲が縮小されることによって、患者の受診抑制が加速することが懸念される。

 議員からは、「新型コロナ治療薬の9千円の窓口負担は過重だ。既に受診抑制が起こっているのではないか」「新型コロナは今後もなくなることはない。すぐに受診できる体制を整えることが必要だ」などの意見が出た。

 その他に、「PFAS問題を解決する議員連盟を立ち上げている。健康影響ははっきりしないというのが国の姿勢だが、国家予算を付けて疫学調査を行うことを求めていく」「インボイス制度についても超党派で反対運動を行っており、署名を55万筆集めている」「臨時国会で政府は所得税を中心とした減税案を出してくると思われるが、所得税では効果にムラが生じるため、消費税の減税を求めていく」など、活発な意見が交わされた。

 同日、13時からは、日比谷野外音楽堂で「いのちまもる10・19総行動」が開催された。

(『東京保険医新聞』2023年11月5日号掲載)