オン資訴訟 第四回口頭弁論 全国から原告24人が出廷

公開日 2024年01月09日

 12月7日、「オンライン資格確認義務不存在確認等請求訴訟」の第四回口頭弁論が東京地裁(岡田幸人裁判長)で開かれ、国から2度目の反論(準備書面)が示された。弁護団に加え、全国から集結した原告24人が原告席で審理に臨み、約75人が傍聴した。

 本訴訟で原告側は、▼オンライン資格確認(以下、オン資)に係る事項を委任する健康保険法の規定は存在せず、仮に委任があると解釈しても、改正後療養担当規則はその委任の範囲(療養の給付)を逸脱してオン資を義務化しており、違法・無効であること、▼オン資の義務化は、医療活動という保険医である原告らの職業上の権利を侵害し、違憲・無効であること、を主張している。第三次訴訟まで合わせた最終的な原告数は1415人に達している。

 
 記者・原告説明会の模様(12月7日、法曹会館)

国が裁判所からの指摘事項に対して回答

 前回の口頭弁論で、岡田裁判長は国に対し、①(資格確認等の)方法を法律が省令等に委任している類例があるか、②国が証拠として提出した国会の会議録で、オン資の体制整備を義務付けることに厚生労働省側からも否定的な意見が出されたことと義務化の整合性、について説明を求めていた。

 ①について、国は、健康保険法70条1項と同様に、「○○○で定めるところにより、△△△を担当しなければならない」という文言で省令や告示に△△△の方法を委任している例として、児童福祉法、生活保護法、覚醒剤取締法等を挙げ、健康保険法70条1項についても「療養の給付の範囲のみならず、療養の給付を担当するに当たって遵守することが必要な方法・手続きについても委任しているものと解すべき」と主張した。

 ②について、国は「国会において議論されたか否かによって本訴訟の結論が左右されるものではない」とした上で、厚労省審議官の答弁はあくまで「おおむね全ての医療機関でオン資を導入するという目標」を前提とした発言であり、オン資義務化と矛盾するものではないと主張した。

保団連の調査結果を軽視

 資格確認に関するトラブルが発生する等、オン資の義務化によって全国の医療機関で事務負担が増加しているという原告の主張に対しては、国は「オン資によって事務負担が軽減された」「オン資による将来的な医療の質の向上を期待する」といった医療機関数件に対するヒアリングで得た声を根拠に反論した。トラブルや事務負担増に関する保団連の調査結果については「あくまで保団連が実施したアンケート結果にとどまり、具体的な内容や実態が明らかになるとはいえない」と、軽視する姿勢を見せた。

 岡田裁判長は、原告が反論の準備書面を提出する期限を2月16日と指定し、第五回口頭弁論は2024年2月29日に103号法廷で開かれることが決まった。

説明会に全国から約90人が参加

 口頭弁論の後、原告団は法曹会館で記者・原告説明会を行い、全国から約90人(うち原告約30人、メディア7社)が参加した。開会に際し、全国保険医団体連合会の住江憲勇会長からあいさつがあった。弁護団から、本訴訟の概要と第四回口頭弁論における国の主張について説明をした後、質疑応答・意見交換を行った。

 記者から国への反論のポイントについて質問を受けた二関辰郎弁護士は、「国の準備書面は受領したばかりだが、反論する点は多数あり、本日の資料にも初期的な検討結果をまとめてある。たとえば、国は健康保険法70条1項と同様の文言で省令等に委任している他の法律を挙げてきたが、健康保険法と異なり、資格確認という方法について別途規定がない法律を含めるなど事情が異なる場合も一緒にした主張をしている」と述べた。

 竹田智雄医師(保団連副会長、岐阜協会会長)は、「国側の証拠に示されたオン資のメリットを訴える医療機関の声は数件だが、保団連のトラブル実態調査は1万件以上の会員医療機関から回答を得ている。マイナ保険証の利用率が5%を下回っていることも含め、オン資が患者・医療機関から必要とされていない実態を国に理解していただきたい」と発言した。

 武村義人医師(保団連副会長、兵庫協会副理事長)は、「保団連が実施した調査結果の軽視は見過ごせない。また、改正マイナンバー法成立時に作成された附帯決議は全く守られておらず、このままでは患者の受療権・自己情報コントロール権が侵害されかねない状況だ」と訴えた。

 山田美香歯科医師(保団連理事、静岡協会副理事長)は、「国は『義務化の適用除外規定や経過措置、導入に対する財政支援を行っているため、医療機関に事業継続困難な影響を与えるとは想定しがたい』と主張しているが、除外規定や経過措置は限定的で、財政支援は修理費や維持費に適用されない点を反論していただきたい」と述べた。

 その他、黒田康之歯科医師(岩手協会副会長)、武田浩一医師(保団連理事、千葉協会副会長)、橋本健一歯科医師(東京歯科協会理事)、藤田倫成医師(神奈川協会理事)、市川誠歯科医師(保団連理事、長野協会副会長)、杉山正隆歯科医師(保団連理事、福岡歯科協会副会長)から、各保険医協会でオン資を理由とした廃院が相次いでいる実態が報告される等、活発に意見交換が行われた。

 喜田村洋一弁護団長は、「次回の口頭弁論では、オン資義務化による廃院等、地域医療への影響や問題点も訴えていきたい。各地の実情を集約するため、ぜひ情報提供をお願いしたい」と呼びかけた。

 須田昭夫原告団長は、「本訴訟は、オン資の義務化撤回を求めるだけでなく、マイナ保険証への一本化に待ったをかけるという意義もあるように思う。現行の健康保険証存続を求める運動と連動しながら引き続き取り組んでいきたい」と意気込みを述べた。

 
 住江憲勇保団連会長
 
 
 竹田智雄医師

 
 武村義人医師

(『東京保険医新聞』2023年12月25日号掲載)