2024年診療報酬改定率に抗議する談話

公開日 2024年01月30日

2024年診療報酬改定率に抗議する談話
実質プラス0.18%では国民医療を守れない。診療報酬の十分な引き上げを求める

 


審査指導対策部長 浜野 博

 

 

 2024年度の診療報酬改定については、12月20日の予算大臣折衝で改定率を全体でマイナス0.12%とすることで合意し、22日に閣議決定された。自民党政権下で6回連続のマイナス改定となった。

 「本体」プラス0.88%、「薬価」「材料」でマイナス1.00%、全体で0.12%のマイナス改定である。「医科」分についてはプラス0.52%にとどまった。医療従事者の賃上げ対応に0.89%分(内訳:40歳未満の勤務医と事務職等0.28%、看護職・病院薬剤師・その他の医療関係職種0.61%)、低所得者の入院時の食事基準額として0.06%分を充てる一方、「生活習慣病を中心とした管理料、処方箋料等の再編等の効率化・適正化」をマイナス0.25%とする。

 新型コロナパンデミックは、これまでのわが国の医療提供体制が機能不全に陥ってしまったことを明らかにした。コロナ禍を経験して国民の多くが安心して医療機関にかかることができる地域医療の整備・拡充を望んでいた。しかし、財務省の財政制度等審議会が11月20日にとりまとめた2024年度予算編成の建議では、診療報酬改定についてマイナス改定とすることが適当であると結論付けた。同建議は内部留保をため込む輸出大企業や超富裕層への優遇税制には一切言及せず、一方で「診療報酬をプラス改定すると保険料が増加、現役世代の所得が減少する」とし、医療者と国民を分断することを狙っている。また、恣意的な数値を用いて診療所を標的とし、「初・再診料の引き下げにより報酬単価を5.5%(改定率で約マイナス1.00%)程度引き下げるべきである」とし、病院と診療所を対立する構図に持ち込もうとしている。

 「本体」プラス改定となったことのみを強調するメディアも多いが、医療従事者の賃上げ対応分と入院時の食事基準の対応分を除くと、用途が限定されない本体財源は僅かプラス0.18%にすぎない。物価高騰や未だ続く感染症対策に対応するためには全く不十分である。しかも、中医協では外来管理加算の廃止や特定疾患療養管理料、生活習慣病管理料等の算定要件の厳格化、リフィル処方の活用等が議論されており、外来を中心とする診療所・中小病院では実質マイナス改定となることが懸念される。

 入院時の食事基準額については、引き上げの財源を患者負担とした上で、低所得者の負担を緩和する対応となった。その他、長期収載品と後発品の差額分も患者負担(選定療養費)とされたが、断じて容認できない。長期収載品の薬価を引き下げ、後発品との差額を減少するなどにより、保険給付を堅持しなければならない。

 そもそも診療報酬は2000年以降、累計で10%以上引き下げられてきた。医療費抑制により医師数が不足、医療従事者の確保もままならない状態となり、医療提供体制は脆弱化している。全ての患者・国民が安心して適切な医療を受けられる体制の充実は、日本国憲法に定められた国の責務であるはずだ。医療資源は必要不可欠な社会保障である。

 中医協では、今後も2024年2月上旬の診療報酬改定の諮問答申に向け、審議が続く。協会は、診療報酬の連続マイナス改定に強く抗議するとともに、国民のいのちと健康を守る立場から基本診療料を中心とする診療報酬の十分な引き上げと患者窓口負担の大幅な軽減を求める。

(『東京保険医新聞』2024年1月25日号掲載)