国会行動 診療報酬大幅引き上げで十分な賃上げを

公開日 2024年03月06日

伊藤俊輔議員(衆・立憲/右)
川田龍平議員(参・立憲/左)
吉良よし子議員(参・共産/中央)
山添拓議員(参・共産/中央)

 

  協会は2月15日、国会議員要請を行い、吉田章副会長と竹内真弓、水山和之両理事が参加した。

 ①健康保険証を存続させること、②医療従事者の賃上げを実現できる診療報酬改定を行うこと、③レセプトオンライン請求の義務化を撤回すること、の3点を要請した。

 伊藤俊輔(衆・立憲)、川田龍平(参・立憲)、吉良よし子(参・共産)、山添拓(参・共産)各議員本人と面談した他、山岸一生(衆・立憲)、末松義規(衆・立憲)、笠井亮(衆・共産)、宮本徹(衆・共産)、小池晃(参・共産)、田村智子(参・共産)、天畠大輔(参・れいわ)各議員秘書と面談した。

健康保険証存続が国民の総意

 政府は健康保険証を2024年12月2日に廃止するとしているが、マイナ保険証の利用率は2023年4月以降下がり続け、2023年12月の利用率は4・29%である。この数値はオンライン資格確認(以下、オン資)を行っている中でのマイナ保険証による資格確認の割合であり、オン資を用いずに健康保険証で資格確認を行った件数を含めるとさらに低くなる(3・1%程度)。

 厚労省の資料によれば、若年者ほどマイナ保険証の利用率が低い傾向にあり、また、マイナ保険証の利用を呼びかけている国家公務員のマイナ保険証利用率も4・36%(昨年11月分/厚労省は4・88%)である。

 保団連のマイナ保険証に関する調査(発表日1月31日、回答医療機関数8672件)では、トラブルを経験した医療機関は59・8%で、そのうち82・9%では患者が持参していた健康保険証を用いて対応している。2024年秋の健康保険証の廃止に対しては、賛成が4・4%、「延期すべき」が13・5%、「保険証を残すべき」が79・4%と、医療現場では保険証存続を望む声が圧倒的多数を占めている。

 こうした現状を受けて、現在、全国27都道府県の110議会から健康保険証廃止の中止や延期を求める意見書が可決されている。国民・医療機関双方に支持されていないマイナ保険証への一体化は根本から見直し、健康保険証は存続させる必要がある。

 面談した議員からは、「政府は総点検を行ったとして安全性を強調しているが、問題があった部分を点検しただけであり、根本的な問題は解消されていない」「マイナ保険証の推進が24年度改定の診療報酬に組み込まれている(医療DX推進体制整備加算)のは問題だ」「災害時のマイナカードの利便性を河野デジタル相が発言しているが、通信も電気も止まっている中、マイナカードは何の役にも立たないことが明らかになった。そもそも災害に便乗する形でマイナカードを推進すること自体が誤りだ」等の意見が出た。

賃上げには基本診療料の拡充が不可欠

 2月14日の中医協総会で答申された診療報酬改定案は、医療従事者の賃上げを謳いながら、管理料の変更や処方箋料の引き下げなど、実質的に多くの内科系医療機関の報酬を削減する内容となっている。初・再診料の微増やベースアップ評価料の新設では、物価・光熱費が高騰している中で職員の賃上げを行うことは不可能である。医療従事者の賃金を十分に引き上げることができるよう、基本診療料の大幅な引き上げは必要不可欠だ。

 面談した議員からは「医療従事者の生活を守らずして、国民の生命を守ることはできないと考えている。診療報酬の拡充が必要だ」「特定疾患からの3つの慢性疾患の削除をはじめ、現場の実態を無視して、患者の健康を破壊するような改定だ」等の意見が出た。

レセプトオンライン請求義務化は撤回を

 2023年11月30日の請求命令の改正でオンライン請求が実質的に義務化された。現在紙レセプトによる請求を行っている医療機関は2024年2月29日、光ディスク等による請求を行っている医療機関は2024年8月31日までに届出を行わなければ現在の請求方法を継続できなくなり、地域医療に支障をきたしかねない。

 レセプト請求権に対する新たな義務を法律ではなく省令で直接課すことは「国会を唯一の立法機関」と定めた憲法41条に違反する。
政府はオンライン請求義務化の目的として「審査・支払業務の円滑化」を掲げるが、光ディスク等による請求の場合であってもレセプトの内容はデータ化されており、オンライン請求と審査上の差異はない。2009年にレセプトオンライン請求義務化撤回訴訟が起きた際、厚労省は一度義務化を撤回し、「電子媒体による請求であっても、医療保険事務の効率化、医療サービスの質の向上等の政策目標は達成可能である」と回答している。レセプトオンライン請求の義務化は撤回しなければならない。

 面談した議員からは、「オンライン請求の義務化が再度打ち出されたのは、医療DXの枠組みでオン資の義務化、健康保険証廃止の問題とも繋がっている」等の意見が出た。

 正午からは衆議院第一議員会館内で「保険証を残そう!国会内集会」が開かれ、中村洋一副会長が参加した。

(『東京保険医新聞』2024年3月5日号掲載)