オン資「義務化」撤回訴訟 第六回口頭弁論 保険証廃止前に判決を

公開日 2024年06月07日

 5月22日、「オンライン資格確認義務不存在確認等請求訴訟」(以下、本訴訟)の第六回口頭弁論が東京地裁(岡田幸人裁判長)で開かれ、国から3度目の反論(準備書面)が示された。弁護団に加え、全国から集結した原告17人が原告席で審理に臨み、約40人が傍聴した。

 
 記者会見・原告説明会の様子(2024 年5 月22 日、航空会館)

 政府が現行の健康保険証発行を停止する、2024年12月2日までに判決を得られるよう、原告は6月中に反論の準備書面を提出し、第七回口頭弁論は2024年7月9日に103号法廷で開かれることが決まった。

 原告側は、健康保険法70条1項が省令(療養担当規則)に委任しているのは、あくまで「療養の給付」であり、同法の規定から資格確認を保険医療機関等に義務付ける内容の省令を制定することを委任する授権の趣旨が、規制の範囲や程度等に応じて明確に読み取れることはない。仮に委任があるとしても、オンライン資格確認の義務化は委任の範囲を逸脱していると指摘した。

 一方国は、同項が、資格確認を含め、保険医療機関等が療養の給付を担当するに当たって必要となる一連の行為や必要な体制の整備に当たって遵守すべき事項を含めて、基本的事項の全般の定めを委任しているとの主張を繰り返した。

国の反論 オン資義務化での閉院事例を軽視

 第五回口頭弁論に際し、原告側は、全国保険医団体連合会(保団連)が実施したトラブル事例アンケートに加え、オンライン資格確認の義務化によって閉院に追い込まれた医師および歯科医師による陳述書を証拠として提出し、「国民の生活の安定と福祉の向上に寄与する」(健康保険法1条)という、授権法の趣旨・目的に反する事態が現に生じている点を強調した。

 しかし、国は、準備書面の中でこの陳述書には触れず、「オンライン資格確認の義務化に伴う経済的負担によって、多数の医療機関が廃業を余儀なくされたなどとという事実はおよそ認められない」との主張を繰り返した。

勝訴に向けて意気込み語る

 口頭弁論の後、原告団は航空会館で記者・原告説明会を行い、全国から約50人(うち原告約20人、メディア5社)が参加した。

 坪田有史原告団副団長(東京歯科協会会長)は、「健康保険証による資格確認に、医療機関も患者も不便を感じていないのに、オンライン資格確認を義務化したことに憤りを感じている。勝訴に向けて、本訴訟の重要性を広範に伝えていきたい」と挨拶した。

 続いて、住江憲勇医師(保団連名誉会長)、宇佐美宏歯科医師(保団連歯科代表・副会長、千葉協会副会長)、黒田康之歯科医師(岩手協会副会長)、岡野久医師(千葉協会会長)、橋本健一歯科医師(東京歯科協会理事)、藤田倫成医師(神奈川協会理事)、高本英司医師(大阪協会副理事長、保団連監査)から各保険医協会でのオン資を理由とした廃院が相次いでいる実態や、本訴訟にかける意気込み等が述べられた。

 喜田村洋一弁護団長は、「健康保険証の発行停止までに勝訴判決を得られるよう、準備書面の作成に取り組みたい」と決意を述べた。

 須田昭夫原告団長は、「日本の医療や患者・医療機関を守るため、勝訴に向けて邁進したい」と結んだ。

 
 坪田有史原告団副団長

 
 喜田村洋一弁護団長

 
 須田昭夫原告団長

(『東京保険医新聞』2024年6月5日号掲載)