公開日 2024年07月30日
7月9日、「オンライン資格確認義務不存在確認等請求訴訟」の第七回口頭弁論が東京地裁103号法廷(岡田幸人裁判長)で開かれた。弁護団に加え、全国から集結した原告15人が原告席で審理に臨み、傍聴席を含め約80人が出席した。
中村洋一副会長は「既に一部薬局等ではマイナ保険証でなければ受け付けない等の違法な対応も行われている。資格確認方法だけではな
く、国民の受療権にかかわる問題だ」と述べた(7月9日、法曹会館)。
口頭弁論に先立ち、原告側は6月28日に準備書面を提出し、国の主張に再び反論した。
口頭弁論で岡田裁判長は、「次回で審理が終結する可能性もある」と述べ、国に対して次の準備書面で主張を尽くすよう求めた上で提出期限を9月13日と指定し、第八回口頭弁論は9月19日に103号法廷で開かれることが決まった。口頭弁論の後、原告団は法曹会館で記者・原告説明会を行い、メディア7社が参加した。
国の主張に再度反論
国は、健康保険法70条1項が、資格確認を含め保険医療機関等が「療養の給付」を担当する上で遵守すべき基本的事項に係る全般の定めを厚生労働省令に委任していると主張している。その根拠は大要、①同法70条1項の文言、②資格確認を義務化する必要性、③同法70条1項以外に療養の給付に係る委任規定が存在することは国の主張の障害にならないの3点だ。
それに対し原告側は準備書面で、①同法70条1項の文言上「担当しなければならない」対象はあくまで「療養の給付」であり、給付を受けるための「方法」(同法63条3項)とは区別されている、②規則による義務化は必要ない上に国会の議論に反する、③同法70条1項が包括的委任であれば他の委任規定は必要ない等、上記の3点がいずれも国の主張を否定する根拠ないし否定する方向に働き、国の主張が認められる余地はないと主張した。
国はまた、医薬品ネット販売の権利確認等請求事件における最高裁平成25年1月11日第二小法廷判決(民集67巻1号1頁)が前提とする事情と本件は異なると主張している。
それに対し原告側は、①オン資の義務化は多数の保険医療機関が廃業を余儀なくされるほどの負担である、②保険医療機関が廃業を余儀なくされると、資格確認以前の問題として、被保険者は医療を受ける機会を奪われる、③オン資の義務化に向けた動きに対して、全国の保険医協会を中心に多数の反対意見が出されていた、という3点に鑑み、同最高裁判例が示した「一定の行為を規制する内容の省令の制定を委任する授権の趣旨が、その規制の範囲や程度等に応じて法律の規定から明確に読み取れることが必要である」という基準が本件にも妥当し、オン資の義務化を定めた療養担当規則は、同法による委任の範囲を逸脱していると改めて指摘した。
記者・原告説明会を開催 11月中の判決の可能性も
口頭弁論の後、原告団は法曹会館で記者・原告説明会を行い、全国から約80人(うち原告約15人、メディア7社)が参加した。
中村洋一副会長の挨拶に続いて、住江憲勇医師(保団連名誉会長)、黒田康之歯科医師(岩手協会副会長)、橋本健一歯科医師(東京歯科協会理事)、藤田倫成医師(神奈川協会理事)、馬場一郎歯科医師(神奈川協会副理事長/保団連理事)、高本英司医師(大阪協会副理事長/保団連監査)、杉山正隆歯科医師(福岡歯科協会副会長/保団連理事)、申偉秀協会理事から、本訴訟にかける意気込みや医療機関の状況等、活発に意見交換が行われた。
喜田村洋一弁護団長は、「本訴訟では、療養担当規則でオン資を義務化した合理性・合法性を国側が明らかにすることが裁判長から求められている。国に対する裁判長の念押しをふまえると、次回で結審し11月中に判決が出される可能性が高く、判決の内容にも期待が持てるのではないか」と展望した。
須田昭夫原告団長は、「毎回、口頭弁論に多数の原告が出廷しており、オン資の義務化による問題の深刻さが裁判長に伝わっているのではないか。良い結果を導くことができるよう、最後まで邁進したい」と結んだ。
(『東京保険医新聞』2024年7月25日号掲載)