公開日 2024年10月03日
病院経営をめぐる環境は以前にも増して苦しい状況となっている。2024年4月から医師の働き方改革が本格始動し、医師の時間外労働の規制が開始された。医療機関は、勤務医の確保や宿日直許可の申請が必要となる。チーム医療が叫ばれる中、タスクシェア・タスクシフトが推進され、2024年度診療報酬改定においても看護師をはじめとする医療スタッフの役割が重視されている。
病院有床診部は、7月3日に都内の病院・有床診療所会員359件にFAXでアンケートを送付し、7月19日までに40件の医療機関(病院29件、有床診10件、不明1件)から回答を得た(回収率11%)。以下、最も回答数の多かった看護職員の確保と医師の働き方改革についてなどを中心に回答内容を報告する。
看護職員の採用・定着の困難、施設基準への影響も
看護師の確保については60%(24件)の医療機関が、「看護職員を募集しても集まらない」と回答し、また70%(28件)の医療機関が、「有料職業紹介事業者の紹介手数料が高くて困っている」と回答している。さらに、32・5%(13件)の医療機関が、「看護職員の定着率が低い」と回答している。
加えて、5%(2件)の医療機関は、看護職員を確保できず、点数と人員配置基準の低い診療報酬の入院料に変更したと回答している(表1)。
医療機関で直接採用できればよいが、募集しても集まらないため、有料職業紹介事業者を利用せざるをえない実態がある。自由意見欄では「法人全体で紹介料が1000万円になっている」「診療報酬が紹介会社に流れていく」「診療報酬は医療のために使いたい」等、深刻な実態が明らかとなった。
新設のベースアップ評価料、事務負担や持ち出し増加
ベースアップ評価料については、40%(16件)の医療機関が「届出に伴う事務作業に難渋している」と回答。加えて対象職員以外のベースアップを行うには、実質的に医療機関の持ち出しで行わなければならず、医療機関の経営圧迫に拍車をかけている。
十分な勤務医を確保できず病院機能の一部が縮小
医師の働き方改革については、32・5%(13件)の医療機関が、必要十分な勤務医を確保できないと回答している。さらに5%(2件)の医療機関では、勤務医を確保できず機能の一部を縮小したと回答している(表2)。看護職員と同様、勤務医の確保が、医療機関の大きな負担となっている。
看護職員紹介手数料に係る補助を東京都へ要求
地域医療体制を確保し、医療機関の負担をこれ以上増やさないためにも、医療従事者の確保や養成が必要不可欠だ。そもそも、初・再診料等や入院基本料などの基本診療料の点数をはじめとする各種の診療報酬項目が、全ての医療従事者が必要な医療を提供するために十分なものであれば、医療従事者は滞りなく採用でき、ベースアップ評価料も必要ない。
協会は8月22日、「2024年度診療報酬の再改定及び不合理是正等実施に係る緊急要望書」を内閣総理大臣、厚労大臣等へ発出し、基本診療料の大幅引き上げを強く求めている。
東京都に対しては、看護職員の紹介手数料の補助等を求め、都議会各会派にも実現のために協力要請を行った。協会は引き続き、地域医療に必要な医療従事者を確保できる制度を求めて取り組んでいく。
(『東京保険医新聞』2024年9月25日号掲載)