公開日 2024年10月25日
9月19日、「オンライン資格確認義務不存在確認等請求訴訟」の第八回口頭弁論が東京地裁103号法廷(岡田幸人裁判長)で開かれた。弁護団に加え、全国から集結した原告26人が原告席で審理に臨み、約70人が傍聴した。
口頭弁論に先立ち、被告(国)は9月13日に準備書面を裁判所へ提出し、原告の主張に4度目の反論を行った。12月2日に予定される健康保険証の新規発行停止を目前に、国の主張に再度反論を行うか、反論を行わず結審を求めるかの分岐点となったが、原告と弁護団は反論を行わない判断を固め結審が決まった。岡田裁判長は判決の期日を11月28日15時と指定した。
オン資義務化への反対意見 決して少なくない
原告側は、①オンライン資格確認(オン資)の義務化は多数の保険医療機関が廃業を余儀なくされるほどの負担である、②保険医療機関が廃業を余儀なくされると、資格確認以前の問題として、被保険者は医療を受ける機会を奪われる、③オン資の義務化に向けた動きに対して、全国の保険医協会・医会を中心に多数の反対意見が出されていた、という3点に鑑み、医薬品ネット販売の権利確認等請求事件における平成25年最高裁判決が示した「法律の規定から、一定の行為を規制する内容の省令の制定を委任する授権の趣旨が、その規制の範囲や程度等に応じて明確に読み取れることが必要である」という基準が本件にも妥当し、オン資の義務化を定めた療養担当規則は健康保険法による委任の範囲を逸脱していると主張していた。
それに対し国は今回、オン資義務化に反対する意見は「保団連や保険医協会という特定の団体に限られ、消極的な意見が相当数存在したとは認められない」こと等を理由に、同最判が前提とした事情(規制に反対する意見が一般の消費者のみならず専門家・有識者等の間にも少なからず見られたこと)に本件は妥当しないと主張した。
しかし、保団連の開業医会員数は約8万5千人、病院・診療所開設数に対する組織率は約65%であり、消極的な意見がなかったとする国の主張には無理がある。原告は今回の口頭弁論に際し、保団連と各協会・医会の会員数・組織率を示す証拠を裁判所に提出した。
法に基く判決を望む
口頭弁論後、原告団は航空会館で記者・原告説明会を行い、全国から約80人(うちメディア9社)が参加した。
フロアからは、竹田智雄医師(保団連会長)の挨拶に続いて、住江憲勇医師(保団連名誉会長)、宇佐美宏歯科医師(保団連歯科代表・副会長、千葉協会副会長)、橋本健一歯科医師(東京歯科協会理事)、藤田倫成医師(神奈川協会理事)、山田美香歯科医師(保団連理事、静岡協会副理事長)、武村義人医師(保団連副会長、兵庫県保険医協会副理事長)、島津俊二歯科医師(兵庫協会評議員)、杉山正隆歯科医師(保団連理事、福岡歯科協会副会長)、細部千晴医師(保団連理事、東京協会理事)、成瀬清子医師(東京協会会員)から、本訴訟にかける意気込みや医療機関の実情報告等、活発に意見交換が行われた。
喜田村洋一弁護団長は、「判決がいつになるかが一番の関心事だったが、裁判所の判断で保険証発行停止が予定される12月2日よりも前の11月28日に決まった。我々の訴えに対して真摯に検討し、法律・憲法に基づく判決が出されるものと確信している」と述べた。
須田昭夫原告団長は、「マイナ保険証への一体化を『済んだこと』にしたくない思いから提訴に踏み切った。訴訟が行われている限り、国が望む『済んだこと』にすることはできない。誰もが平等に医療を受けることができる国民皆保険制度の基礎となる現行の健康保険証を守るためにも、本訴訟に力を尽くしたい」と結んだ。
※判決は、11月28日(木)15時に東京地裁103号法廷で言い渡され、記者会見を実施する。その後、原告説明会を開催する、ぜひ多くの方の参加をお願いしたい。
記者・原告説明会の様子(2024 年9 月19 日、航空会館)
(『東京保険医新聞』2024年10月5日号掲載)