公開日 2025年02月26日
医科歯科連携委員会は2月2日、東京歯科保険医協会、千葉県保険医協会と共催し医科歯科連携研究会を開催し、会場14人、Webで114人が参加した。
「糖尿病診療・歯周病対策の最前線」と題し、医科から栗林伸一氏(三咲内科クリニック院長)、歯科から山本龍生氏(神奈川歯科大学歯学部口腔衛生学分野教授)が講演した。
栗林伸一氏
山本龍生氏
栗林伸一氏は、咀嚼機能の不良群と良好群を比較すると、良好群の方がHbA1c値が低い傾向にあると自院の統計に基づき話した。咀嚼の重要性を説き、咀嚼機能低下の防止は口腔フレイル予防に繋がること、糖尿病患者へは歯科受診の勧奨が大事だと指摘した。
糖尿病の治療・管理については2024年度診療報酬改定で特定疾患療養管理料から生活習慣病管理料ⅠⅡに一本化され、生活習慣病管理料の算定要件に「糖尿病の患者について、歯周病の診断と治療のため、歯科を標榜する医療機関への受診を促す」ことが追加された。
栗林氏は自身が診る糖尿病患者の中で歯科を定期受診していると回答した人の特徴として以下等を挙げ、糖尿病は歯科介入も含む統括的管理が必要だと述べた。
①毎食後や寝る前に歯磨きをしている人が多い。
②BMIやHbA1cが良く管理されている。
③生活の仕方全般が良好である。
④食行動管理スコアが高く自分に見合った食事摂取量を守っている。
⑤野菜や海藻など食物繊維を意識して食べている。
⑥規則正しく食事をし、薄味にすることを心掛けている。
⑦外食・中食は栄養バランス量を考慮している。
⑧食べる順番を考えゆっくりよく噛んで食べている。
⑨腎症1期が多い。
山本龍生氏は、歯周病は永久歯を失う主な原因であり、感染症や生活習慣病などのリスク要因となることを説明した。糖尿病患者は咀嚼機能が低く、重度歯周病であるとHbA1cが高いことや、歯周病が重症であればあるほど尿アルブミン値、CRPが高い傾向にある、という最近の研究に触れ、歯周病の予防と治療のポイントは、ブラッシングである、と話した。
そして日本歯周病学会の『糖尿病患者に対する歯周治療ガイドライン改訂第3版2023』を紹介した。同ガイドラインの中では、糖尿病では歯周病が悪化し、高齢の糖尿病患者では血糖コントロールが不良だと歯周病が重症化することや、歯周病治療が奏功するかは血糖コントロールに依存すること、糖尿病を有する歯周病患者に対する歯周基本治療はHbA1cの改善に有効であり、実施が強く推奨されていること等を指摘した。
研究会終了後の感想では、「糖尿病と歯周病の関係についてよく分かった」「歯科的な病気に関しては聞く機会がないので大変良い会だった」「歯周病に対してブラッシングの重要性を再認識できた」などが寄せられた。
当日の模様(2月2日、協会セミナールーム)
(『東京保険医新聞』2025年2月15日号掲載)