国会行動 高額療養費、マイナ保険証問題など要請・懇談

公開日 2025年04月03日

伊口幸子議員(衆・維新、写真右)
田村貴昭議員(衆・共産、写真中央)
田村智子議員(衆・共産、写真左)
山添拓議員(参・共産、写真右)

 

  協会は3月13日、国会議員要請を行い、水山和之副会長、竹内真弓理事、細部千晴理事が参加した。

 ①高額療養費の自己負担上限額の引き上げを白紙撤回すること、②マイナ保険証登録の有無にかかわらず、保険証または資格確認書を全被保険者に交付することを法制化すること、③医師「偏在」是正ではなく医療費総枠を拡大すること、の3点について、東京選出等の国会議員に要請し、「現行の健康保険証を残してください」請願署名71筆(累計4936筆)を提出した。

 当日は、阿部祐美子(衆・立憲)、猪口幸子(衆・維新)、田村貴昭(衆・共産)、田村智子(衆・共産)、山添拓(参・共産)各議員および、末松義規(衆・立憲)、松下玲子(衆・立憲)、山岸一生(衆・立憲)、小池晃(参・共産)各議員秘書と面談した。

高額療養費上限額引き上げの撤回を

 石破首相は高額療養費の自己負担上限額について、2025年8月からの引き上げを見送り、「今年秋までに方針を再検討する」としている。引き上げが見送られたことは患者団体をはじめとする市民団体の運動の成果だが、7月の参議院選挙後に再び引き上げ案が出される可能性がある。

 高額療養費制度は、高額な医療費自己負担によって治療を諦めることなく誰もが安心して医療を受けることができる公的健康保険の最大の柱であり、がんをはじめとする重篤な疾患の治療を行う患者にとっては「命綱」だ。協会は、自己負担上限額の引き上げを白紙撤回するよう強く要請した。

健康保険証復活・資格確認書の完全な交付を求める

 マイナ保険証については資格確認上のトラブルが収まらない中、上昇傾向だった利用率が約25%(2025年1月時点)で伸び悩み、登録解除申請が累計5・8万件にのぼる等、国民の不安・不信が表出している。2025年は2700万人以上がマイナンバーカードの電子証明書の更新を迎えるとされており、大量の更新手続きによる混乱も懸念される。

 資格確認に関する混乱で医療に切れ目が生じないよう、①今国会に提出された「保険証復活法案」を成立させ、保険証の新規発行を再開させること、または、②資格確認書を「当面の間」ではなく恒久的に、全ての被保険者に自動で交付することを法的に定めること、を要請した。

医療費の総枠拡大が必要

 今国会に提出された医療法等改正案では、「外来医師過多区域」において、無床診療所の新規開業への対応を強化(新規開設の事前届出制、「地域外来医療」の要請・勧告・公表、保険医療機関の指定期間の短縮等)することが盛り込まれた。厚労省が昨年末にとりまとめた「医師偏在の是正に向けた総合的な政策パッケージ」の中では、次期診療報酬改定で外来医師過多区域における診療所に対し、診療報酬でペナルティを与えるような制度について「更なる検討を深める」こととしている。

 しかし、2024年度診療報酬改定や諸物価高騰により医療機関は経営難に直面しており、今必要なことは医療費総枠を拡大して経営を立て直すことだ。診療報酬の配分見直しによる負の動機付けを行うのではなく、医療費の総枠を拡大することを求めた。

 懇談した議員からは、「高額療養費制度における自己負担上限額の引き上げは見送られたが、議論は再燃する可能性が高い」「高額療養費上限額引き上げを見送る代わりに、OTC類似薬の保険外しなどが行われないよう注視していく必要がある」等、今後の医療保険制度の改悪を懸念する意見が多数挙がった

 医療DXについては、「マイナンバーカードを取得しにくい方、施設入居者、顔認証が困難な方等が取り残されないよう、検証しながら慎重に進めるべきだ」「交通系ICカードと切符のように、マイナ保険証と従来の保険証を併用できるようにするべきだ」等、マイナ保険証への拙速な一本化に対する慎重な意見があった。

 また、病院の深刻な経営状況については、「診療報酬の引き上げによる早急な対策が必要だ」等の発言があった。

 昼には、国会議員会館前で「医療を守れ!白衣のアピール行動」があり、複数の国会議員からの連帯の挨拶や、がん患者から高額療養費の上限引き上げの白紙撤回を求める発言があった。

 
 高額療養費の負担上限額引き上げ反対のスピーチを行う細部理事(3月13日、国会前)

(『東京保険医新聞』2025年3月25日号掲載)