公開日 2025年04月24日
全国保険医団体連合会(保団連)が実施した「物価高騰に関する医療機関の緊急影響調査」の結果がまとまった。
この調査は、保団連が全国の保険医協会・医会を通じて2025年2月3日~3月7日にかけて行ったもので、37都道府県から4658件の回答があった。東京都では合計459件(無床診療所430件、有床診療所12件、病院17件)の回答があった。
以下、東京都での集計結果について紹介する。
※回答の割合の表記は小数点以下を四捨五入。
7割超の医療機関が減収
2024年1月と比較して、医療機関の収入が「下がった」との回答が全体の72%を占め、「上がった」9%、「変わらない」19%を大きく上回った(図1)。
「下がった」と回答した医療機関の減収の幅は「5%以上10%未満」が34%と一番多く、次いで「10%以上15%未満」が20%、「0%以上5%未満」が17%を占めた。「20%以上」との回答も16%あった(図2)。「下がった」と回答した医療機関のうち50%弱の医療機関が10%以上の減収に苦しんでいる。
物価高騰 9割超が診療報酬で「補填できない」
光熱費・材料費等の高騰分が診療報酬改定で「補填できていない」との回答が91%を占め、補填できている医療機関はわずか9%に過ぎなかった(図3)。
2024年6月の診療報酬改定は初診料が3点、再診料が2点引き上げられたものの、「生活習慣病を中心とした管理料・処方箋料等の効率化・適正化」として10・25%も引き下げられており、大幅なマイナス改定だった。医療機関の収入の大半を占める保険診療は公定価格であり、急激な物価等の上昇分を患者に価格転嫁することはできない。水道光熱費や医薬品費、医療材料、検査委託料等、医業経営上必要不可欠なあらゆるものの価格が高騰しており、医療機関にとって過重な負担となっている。
75%の医療機関で賃上げを実施している(図4)一方、人件費について診療報酬改定で「補填できている」10%、「補填できていない」90%と、光熱費・材料費等の経費とほぼ同様の結果となっている(図5)。
自由記述では、非常に厳しい経営状況の中で、他業種との関係やスタッフ確保のために、院長収入を引き下げたり貯金を取り崩すなどしながら賃上げを行っているとの報告も複数寄せられた。
基本診療料の大幅引き上げが不可欠
「医業経営の現状や困りごと」について尋ねたところ、「低すぎる診療報酬」「物価・光熱費・諸経費の高騰」が多数を占め、その他にも「医療DX、デジタル化導入・維持のための費用負担」「生活習慣病管理料、ベースアップ評価料などの事務的負担の増大」「コロナ関連補助金の終了およびコロナ融資の返済開始」などの回答があった。
医療機関の経営を安定させるために、速やかに期中改定を実施し、初・再診料をはじめとする基本診療料の大幅な引き上げが必要だ。
福岡資麿厚労相は3月7日に開催された衆議院の厚労委員会で「物価高騰などによる医療機関の厳しい状況を踏まえ、診療報酬改定や補正予算の効果も含め、実態をよく把握し、適切に対応する」と述べている。
協会は今回の集計結果を国会行動や厚労省要請活動、医師会や関係学会等との懇談に活用し、基本診療料の引き上げや期中改定を含めた診療報酬の改善を求める取り組みを一層強めていく。
(『東京保険医新聞』2025年4月15日号掲載)