公開日 2025年06月25日

須田クリニック 須田 昭夫
日本の消費税率は、1989年(平成元年)に3%で導入されてから1997年5%、2014年8%、2019年(令和元年)10%に引き上げられた。
消費税率を引き上げるたびに、景気やGDPが落ち込んできた。特に2019年の10%への増税では、景気動向指数がバブル崩壊やリーマンショック時と同様に2カ月連続ゼロとなり、経済の落ち込みが顕著だった。
逆に、消費税率を2%引き下げるとGDPが0・4%押し上げられると言われている。つまり消費税を導入しなければ、1992年から2023年までの30年間、500兆円台に張り付いていたGDPも、もっと成長できたはずである。
医療は国民の基本的な権利であり、課税の対象にするべきではないという考えから、医師は保険医療費からの消費税を受け取っていない。消費税は最終消費者だけが支払う税であり、事業者が支払った消費税は還付される。しかし医療機関の場合、診療に必要な医薬品や設備を購入する際に消費税を支払っても、「控除対象外消費税」が国庫に入金されたままになる。このお金を国は医療機関に還付していない。その総額は大きく、医療機関の経営を強く圧迫している。
消費税が導入されてからの約30年間で、消費税収入の累計は539兆円に達した。その間に、法人税の減税が318兆円、所得税・住民税の減税が295兆円、合計では613兆円の減税がおこなわれた。この関係は、法人税の引き下げが企業の競争力のために進められる一方で、低所得者にとって負担感が大きい消費税が、その財源となってきた過酷な政治を示している。
都政各会派と東京都の消費税に対する政策・発言
自民党は消費税減税には反対しており、森山幹事長は減税反対に政治生命をかけるという。大企業優先の政治を続けている。
都民ファーストの会は消費税減税について発言していない。東京都が行う低所得世帯への1万円の商品券支給案や、水道料の基本料金(860~1460円)無料化4カ月の案など、少額給付金の施策を支持している。
公明党は自民党に追随し、消費税については慎重な立場である。例えば、食料品の消費税率を8%から5%に引き下げる案を提案している。1年間で約1・9兆円の減税になるが、同額の国債が残ることになる。自民党はこれに対して否定的な姿勢である。また、公明党の政務調査会長は、消費税減税は物価高対策としては遅すぎると述べ、代替財源が明確でないまま減税すれば、社会保障の安定性に影響を与えるという立場だ。
共産党は大企業の利益を増やす消費税を当面5%に減税し、恒久減税を目指す立場だ。年間一人12~13・5万円、3人家族で37万円の減税になる。財源は大企業や超富裕層への課税を強化(元に戻す)し、税の再分配を行うことで、格差の是正と経済の安定化を提案する。将来世代には国債を残さないという。
立憲民主党は、食料品を1年間非課税にするという。1年間に約4万円の給付金に相当する減税だが、一時的な減税なので財源を定めず、将来世代の負債が残る。国政では軍需産業支援法、武器輸出など、軍拡関連法案に賛成しており、軍事費の削減には逆行している。
日本維新の会は消費税に関して、食料品の消費税を2年間ゼロにして、1年間に約4万円の減税を2年間行うことを提案している。恒久財源の案はなく、後世代に国債が残ることになる。
国民民主党は実質賃金が持続的にプラスになるまでの間、消費税を5%に減税するというが、期間限定のため財源は赤字国債であり、将来世代に負債を残す。そして企業団体献金を容認している。
社民党は、消費税を3年間ゼロにすることを提案している。消費税ゼロ期間中に所得税の非課税限度額の引き上げや金融所得課税の強化など、不公平な税制の改善にも取り組む方針である。
再生の道(石丸新党)は「日本の未来に責任を持つ気はない」と言っており、減税案も示していない。
東京都は、物価高の影響を受けやすい世帯に対して、1万円分の商品券や電子ポイントを支給する「物価高騰対策臨時くらし応援事業」を実施している。この事業は、都民ファーストの会を含む都議会の主要会派が支持している政策の一つである。
税制は目先をごまかすのではなく、根本的な立て直しを考える必要がある。
(『東京保険医新聞』2025年6月15号掲載)