公開日 2025年06月25日
- 末松義規議員(衆・立憲/中央)
- 髙松智之議員(衆・立憲/右から2人目)
- 山添拓議員(参・共産/中央)
協会は6月5日、国会議員要請を行い、日下部浩理事、竹内真弓理事、細田悟理事、細部千晴理事が参加した。
①物価高騰に直面する医療機関を支援し、診療報酬期中改定(引き上げ)を実施すること、②医療費の削減策を実施しないこと、③保険証の新規発行再開と資格確認書の一律発行の3点について東京都選出の国会議員に要請した。
当日は、末松義規(衆・立憲)、髙松智之(衆・立憲)、山添拓(参・共産)各議員および、山岸一生(衆・立憲)、田村貴昭(衆・共産)、田村智子(衆・共産)、吉良よし子(参・共産)、小池晃(参・共産)各議員秘書と面談した。
診療報酬の引き上げと補助金 両面での対応を
諸物価の高騰が医療機関にも大きな影響を及ぼしている。全国保険医団体連合会(保団連)が2月3日~3月7日に実施した「物価高騰に関する医療機関の緊急影響調査」の東京都分の集計結果によれば、72%の医療機関が昨年1月と比べて収入が「下がった」と回答し、そのうち約半数の医療機関が1割以上の減収となっている。
さらに、光熱費・材料費の高騰分や人件費を診療報酬改定で「補填できていない」とする回答が9割を占めている。医療機関の主な収入源である診療報酬は公定価格であるため、他業種のように価格転嫁をすることができない。物価・人件費の高騰の中で、医療機関経営の厳しさは明白だ。
厚労省は医療機関の経営悪化を受け、福祉医療機構を通して無利子無担保の融資を拡充する等の対応をしているが、融資では一時しのぎにしかならず、将来の展望を描くことはできない。
根本的な解決策としては、基本診療料(初・再診料、入院基本料等)の引き上げを含めた期中改定が必要不可欠である。補助金と診療報酬の両面からの対応を求めた。
医療費削減策は医療崩壊を招く
社会保険料の引き下げを目的として、医療費の4兆円の削減を目指した様々な政策が議論されている。
⑴全国の医療機関で約11万の病床削減
新たな地域医療構想が始まる2027年度までに、全国の病床を約11万床削減する方向で「骨太の方針2025」に反映させることが、自民党・公明党・日本維新の会による「三党協議」で大筋合意された。
病床数は各地域の医療機能を踏まえて適切な数に調整すべきであり、地域医療の実態を無視した強引な病床の大幅削減は医療崩壊を招く。
⑵高額療養費制度の自己負担上限額の引き上げ
政府は、高額療養費制度の自己負担上限額の引き上げについて、当事者・患者団体・医療関係者の反対の声を受け、2025年8月からの引き上げは見送る方針を示した。しかし、秋までに改めて方針を検討するとして、引き上げ方針そのものは撤回していない。誰もがお金の心配なく必要な医療を受けられるよう、引き上げは白紙撤回すべきだ。
⑶OTC類似薬の保険適用除外
医療費4兆円削減の先行実施策としてOTC類似薬の保険適用除外が議論されているが、実質的な患者負担の増加、受診抑制による健康被害、OTC類似薬の適正使用の阻害など、様々な問題点が指摘されている。
これらの削減策は、いずれも医療の質の低下や地域医療の崩壊を招く懸念があるため、実施しないことを強く求めた。
マイナ保険証の強要は不合理
保団連が2025年2月から3月にかけて実施した実態調査によれば、マイナ保険証に関するトラブルは医療機関の9割で発生しており、いまだ混乱が続いている。
厚労省は75歳以上の後期高齢者を対象に、マイナ保険証の保有の有無にかかわらず資格確認書を2026年7月まで一律交付することを決めた。
後期高齢者を一律交付の対象とした理由について、厚労省は、後期高齢者のマイナ保険証利用率が相対的に低いことと、後期高齢者の保険証は毎年7月末に一斉に期限を迎え、資格確認書の交付を求める申請が自治体の窓口に集中する恐れがあることを挙げている。
しかし、2025年3月時点のマイナ保険証の利用率は約27%と全世代で低く、子どもや若年層の方が後期高齢者よりさらに低い。また、マイナポイント事業をきっかけにマイナカードの登録を行った多くの国民が2025年以降電子証明書の更新を迎え(2025年は2700万人以上)、自治体窓口の混乱も、全世代で起こり得る。
東京都では渋谷区と世田谷区が国保の加入者に資格確認書を一律で発行することを決めた。これについて福岡厚労大臣は記者会見で「資格確認書は、国民健康保険法上、マイナンバーカードでオンライン資格確認を受けることができない状況にある方に交付することとされている」「事実関係を把握した上で、必要な対応について検討する」等と述べている。しかし、当の厚労省が後期高齢者への一律発行を決めており、厚労大臣の発言は矛盾している。渋谷区や世田谷区の対応は、マイナ保険証への強引な移行によるトラブル・混乱を防ぐため、医療機関や自治体など現場の実態を踏まえた合理的な措置である。
混乱を避けるための当面の措置として、高齢者だけでなく全世代に資格確認書を一律交付すること、そして、今国会に提出されている「医療保険の被保険者証等の交付等の特例に関する法律案」(通称・保険証復活法案)を早期に審議し、速やかに保険証の新規発行を再開することを求めた。
医療情勢について懇談 消費税減税も話題に
懇談した議員からは、「医師が経営の心配をしなければならない現状は異常であり、治療に専念できる環境をつくることが政治の役割だ」「渋谷区と世田谷区の資格確認書の一律発行に対し、福岡厚労大臣が圧力をかけるような発言をしたのは問題だ」「社会保障は安心して生きるために不可欠なもので、国にとっての負担であるかのように扱うのは間違いだ」等の意見が出た。また、消費税減税についても話題に上り、「党内で有志の勉強会を立ち上げて、消費税5%への引き下げとインボイス制度の廃止を求める提言を執行部に出した」「国民の7割が消費税引き下げを望んでいる。予算委員会で議員から質問する予定だ」等の発言が出た。
昼には「保険で良い歯科医療を」署名提出集会が参議院議員会館内で、会場が満杯となる熱気ある中行われた。
(『東京保険医新聞』2025年6月15日号掲載)