公開日 2025年07月18日
6月22日に協会医科歯科連携委員会は東京歯科保険医協会、千葉県保険医協会と共催で「糖尿病診療における医科歯科連携 愛知モデル」をテーマに医科歯科連携研究会2025を開催した。当日は合計72人(会場11人・web61人)が参加した。
医科と歯科それぞれの立場から、糖尿病における医科歯科連携について語った(6月22日、協会セミナールーム)
糖尿病患者に歯科受診の必要性 伝えて
医科側の講師として、岡田由紀子氏(春日井市民病院糖尿病・内分泌内科部長)が「糖尿病診療における医科歯科連携―これからの課題と期待」と題して講演した。
糖尿病患者には虚血性心疾患、脳血管障害、糖尿病網膜症など様々な合併症があるが、歯周病の予防・管理は合併症予防の土台となる。糖尿病と歯周病の関係の研究は発展しており、歯周病治療は有意にHbA1cを改善させ、歯周病治療が内服薬1剤分の治療効果に匹敵する場合もある。歯科側から見るとコントロール不良の糖尿病は歯周病を悪化させ、歯の喪失リスクとも関与していることが分かっている。岡田氏は、医科側から患者に歯科受診の必要性を伝えていくことが重要だと強調した。
また、糖尿病患者が歯科処置を受ける場合、食事間隔(空腹時間)が長くなると低血糖になりやすいため、事前に何時間くらい絶食になるのかを患者本人に伝えておく必要がある。歯周病・動揺歯・抜歯などで食事摂取量が減るときも注意する。歯科医療機関は低血糖になる危険がある患者のために、ブドウ糖などを常備してほしいと話した。
その他、抜歯等を行うため歯科医療機関から内科主治医へ照会をかける際は、歯科処置はいつ行うか、何時間程度食事摂取できないか、併存疾患など留意すべき疾患があるかどうか等を具体的に確認するようにすると、医科側からも注意点を指摘しやすいと述べた。
生活習慣・食習慣を勘案した歯科治療を
次に歯科側から、押村憲昭氏(かすもり・おしむら歯科院長)が「糖尿病治療における歯科治療のチカラ」と題して講演した。
『糖尿病診療ガイドライン2024』では、糖尿病は歯周病進行の代表的なリスクファクターとされ、HbA1c7・0%以上の糖尿病患者は最も進行リスクが高いことが明記されている。
押村氏の歯科医院では以前から初診時に、飲み物や間食内容などの食生活、歯磨き習慣、生活環境などについての問診に力を入れており、それらの内容は糖尿病治療とも関連が高く、聞き取った内容を医科医療機関に提供して感謝されている。また虫歯治療の一環で糖類の摂取を控えさせ、間食などについても指導することが、結果的に糖尿病の数値の改善にもつながると話した。
押村氏は、糖尿病患者に対し、単純に歯が無いところにインプラント治療を施したとしても、暴飲暴食などの以前からの食生活を改善できていなければ、摂取カロリーが増えて、HbA1cの値も悪くなると述べた。糖尿病のコントロールが不良だとインプラント歯周炎のリスクも上がるので、歯科治療では生活習慣・食習慣を総合的に勘案しながら進めることが大切だと強調した。
講演終了後、約1時間質疑応答が行われ、活発に意見交換した。
(『東京保険医新聞』2025年7月15日号掲載)