[解説]「期限切れ保険証」での受診容認 2026年3月までの時限措置

公開日 2025年07月18日

 厚労省は6月27日、事務連絡 「健康保険証の有効期限切れに伴う暫定的な取り扱いに関する疑義解釈資料の送付について」を発出した。

 有効期限が切れた健康保険証を引き続き持参する患者や、「資格情報のお知らせ」のみを持参する患者に対して、移行期の暫定的な取り扱いとして、「被保険者番号等によりオンライン資格確認システムに資格情報を照会するなどした上で、患者に対して3割等の一定の負担割合を求めてレセプト請求を行うこととする運用は、保険医療機関等の現場における実態を勘案すれば、暫定的な対応として差し支えないものと考える」との解釈を示した。

 この取り扱いは2026年3月末までの措置だというが、それまでに混乱が収まるのかは疑問である。医療機関はオンライン資格確認システムで情報照会を行う必要があるため、受付業務は煩雑になる。

 オンライン資格確認で資格の有効性を確認したにもかかわらず、返戻される事例が相次いでいる。以前は保険証で資格確認していれば、医療機関が了承しない限り返戻してはならない取扱いだった。オンライン資格確認の導入により、これまでの運用が保護にされ、全て医療機関に返戻されている。今回の措置も、医療機関にとって理不尽な返戻のリスクがつきまとう。

マイナ保険証への一本化が生み出した混乱

 そもそも、健康保険証を廃止して、マイナ保険証に一本化しようとしたことに問題の根源がある。

 現場の混乱に対して、政府は場当たり的な弥縫策を続けている。その結果、資格確認の方法が10種類まで膨れ上がった(下表参照)。

 

 また、マイナンバーカード本体の有効期限は10年間だが、カードに内蔵された「電子証明書」の有効期限は5年である。2025年は電子証明書更新の対象者が2768万人発生すると見込まれ、自治体窓口の混乱が予測されている(2025年問題)。

 IC乗車カードが普及した後も紙の切符の販売が続いているように、IT化とはアナログ手段の排除ではない。利用者を取り残さないため、またトラブル発生時のために、従来の方式も残すのが常道である。ましてマイナ保険証の利用率は2025年5月時点で29・30%に過ぎず、とても普及しているとは言い難い。

 健康保険証を復活させるか、資格確認書をマイナ保険証登録の有無にかかわらず一律に交付し、そのことを法的に義務付けるべきである。

(『東京保険医新聞』2025年7月15日号掲載)