国会行動 医療費削減、OTC類似薬問題、診療報酬、資格確認書について懇談

公開日 2025年12月10日

伊藤俊輔議員(衆・立憲/写真右)
山岸一生議員(衆・立憲/写真中央)

 協会は11月20日、国会議員要請を行い、中村洋一副会長と細田悟理事が参加した。

 ①医療費削減政策を実施しないこと、②OTC類似薬の保険適用除外を撤回すること、③財政措置および診療報酬大幅引き上げを実施すること、④資格確認書を一律発行し、保険証の新規発行を再開すること、の4点について東京都選出の国会議員に要請した。

 当日は、伊藤俊輔(衆・立憲)、山岸一生(衆・立憲)各議員および有田芳生(衆・立憲)、柴田勝之(衆・立憲)、末松義規(衆・立憲)、松尾明弘(衆・立憲)、松下玲子(衆・立憲)、くしぶち万里(衆・れいわ)、自見はな子(参・自民)、小池晃(参・共産)、山添拓(参・共産)各議員秘書と面談した。

医療費総枠の拡大を

 10月20日に自民党と日本維新の会による連立政権が成立した。日本維新の会は以前からOTC類似薬の保険適用除外や大規模な病床削減など医療費抑制政策を強く主張しており、連立政権下でこれらの政策が押し進められる恐れがある。医療費削減ありきの政策や医療の市場化は国民保険制度を形骸化させるため、医療費総枠の拡大を求めた。

OTC類似薬保険外し撤回を求める

 医師が処方する「医療用医薬品」と患者が自ら選択する「OTC医薬品」は、有効成分が一致していても、用法・容量、効能・効果、投与経路・剤形などに違いがあり、OTC類似薬(医療用医薬品)はOTC医薬品とイコールではない。自己判断でOTC類似薬を選び服用した結果、重篤な副作用等の健康被害が引き起こされる恐れがある。また、OTC類似薬が保険から外された場合、患者の自己負担が何十倍にも跳ね上がり、経済的な負担も懸念されている。

 セルフメディケーションの過剰な推進は健康を自己責任化させ、医療のあり方そのものを破壊する恐れがある。市販薬乱用(OD)の背景にはセルフメディケーションの推進があると指摘されているため、OTC類似薬保険適用除外の撤回を求めた。

財政措置と診療報酬大幅引き上げを

 四病協が実施した「2025年度病院経営定期調査」の中間報告によると、2024年度の医業利益が赤字の病院が73・8%、経常利益が赤字の病院は63・6%と前年度より悪化している。日本医師会が実施した診療所の緊急経営調査においても、医療法人立で医業利益が赤字の診療所は45・2%、経常利益が赤字の診療所は39・2%と急速に経営状況が悪化していることが明らかになった。経営が厳しいのは「病院」だけではなく、「診療所」も同じであり、医療界全体への対策が早急に必要である。

 人件費や物価が高騰する一方、公定価格である診療報酬はそれに見合った引き上げが全くされていない。地域医療を存続させるため、①医療機関への緊急財政措置および、②次期診療報酬改定での大幅引き上げを求めた。

資格確認書の一律交付と保険証の新規発行再開を

 12月2日に全ての保険証が有効期限切れとなった。しかし、厚労省は、有効期限切れの健康保険証での受診を、オンライン資格確認等システムへの照会を条件として、全ての保険者を対象に2026年3月末まで認めることとした。有効期限が設けられた公的書類の効力を半年以上も認めるのは異常な事態である。デジタル化への一本化は脆弱性を高めるため、資格確認書を全被保険者へ一律交付すること、健康保険証の新規発行を再開することを求めた。

 懇談した議員からは、「病院だけでなく、診療所も経営困難なことは理解している。十分な規模感で補正予算を取り組みたい」「社会保障費を削減すべき支出としてしか見ない政権の姿勢は間違っている。所得格差や貧困などの問題に対する答えとして社会保障があるというポジティブな面を見るべきだ」「OTC類似薬にしろ、高額療養費にしろ、『どれを残して、どれを切るか』という線引き、選別する発想自体が危険だ」等の発言があった。

 昼には、衆議院第二議員会館前で「診療報酬の大幅引き上げしかない!国会前集会」を開催した。駆けつけた国会議員が挨拶した後、全国各地の医師・歯科医師によるリレートークが行われ、医療機関の窮状や診療報酬引き上げを訴えた。

診療報酬大幅引き上げを強く訴えた(11月20日、衆議院第二議員会館前)


(『東京保険医新聞』2025年12月5・15日号掲載)

関連ワード