2026年度診療報酬改定率に抗議する談話

公開日 2025年12月26日

2025年12月26日

東京保険医協会
審査指導対策部長 浜野 博

2026年度診療報酬改定率に抗議する談話
「プラス2.22%では国民医療を守れない。診療報酬の十分な引き上げを求める」

 2026年度の診療報酬改定については、12月24日の予算大臣折衝で改定率を全体でプラス2.22%とすることで合意した。「本体」+3.09%、「薬価」-0.86%、「材料」-0.01%、全体で+2.22%の改定である。
 「本体」の内訳は、医療従事者の賃上げ対応に+1.70%、物価対応に+0.76%、過去2年間の経営悪化の緊急対応に+0.44%、低所得者等の入院時の食費・光熱水費に充てる分として+0.09%、「政策改定(通常改定)」に+0.25%を充当する一方、「適正化・効率化」により▲0.15%とされた。「政策改定(通常改定)」の内訳は、医科+0.28%、歯科+0.31%、調剤+0.08%となる。 
 「本体」部分の改定率が+3.09%となったことのみを強調するメディアも多いが、物価対応に割かれるのは+0.76%のみである。日銀は今後2年間で約4%の物価上昇を予測しており、物価上昇分も満足に手当てされていないのが実態だ。今回の改定にあたっては、医師会をはじめとする医療団体のみならず、東京都も国に対し緊急提言を行っており、その中で少なくとも約10%の診療報酬引き上げが必要と結論付けていた。また、厚労省も、当初は5%のプラス改定を求めていたとも報道されている。+1%を求める財務省との駆け引きで本体改定率が+3.09%とされたが、これでは医療提供の維持どころか、地域医療の崩壊を食い止めることはできない。
 「本体」のうち+1.70%を賃上げに充てることとされた。前回改定で新設されたベースアップ評価料は、増加する事務量と相殺されかねず、全ての医療機関に賃上げの原資が行き渡らないのは明白だ。実際、ベースアップ評価料を届け出ている医療機関は全体の4割程度に留まる。今回の改定では、前回基本診療料の上乗せで対応した40歳未満の勤務医等についても賃上げ分として別枠で措置された。本来、人件費は基本診療料に含まれており、賃上げ分のみを切り離し、加算として対応すべきではない。初診料・再診料をはじめとする基本診療料を大幅に引き上げるべきだ。
 一方、「適正化・効率化」として▲0.15%が計上された。処方や調剤に係る評価の適正化、在宅医療・訪問看護に係る評価の適正化、長期処方・リフィル処方の取組強化等による効率化とされている。
 「適正化・効率化」により診療報酬が下がる医療機関は、地域に密着した診療所・病院など広範囲に及ぶ。実質的な報酬引き下げは、閉院の促進、開業の減少を招き、患者の受診機会と医療機関選択の自由を奪うとともに、医療過疎・医療空白の地域を増やすことにつながる。
 今回公表された大臣折衝事項には患者の自己負担増も併記された。2024年10月以降、先発医薬品と後発医薬品の価格差の4分の1相当が選定療養の対象となり、「特別の料金」として患者負担が求められてきたが、今後は価格差の2分の1相当が患者負担とされ、また、OTC類似薬については薬価の4分の1が「特別の料金」として患者負担とすることが示された。その他にも3割負担の対象となる高齢者の拡大、高額療養費の「外来特例」の縮小、入院時食事療養費、生活療養費の患者負担引き上げなど、制度改悪が目に余る。
 その内容は財政審における「秋の建議」を色濃く反映したものであり、医療費削減ありきの医療現場・患者の実状を無視した内容だ。
 そもそも診療報酬は2000年以降、累計で10%以上引き下げられてきた。深刻な物価高騰、低く据え置かれた診療報酬や人手不足の中、医師・医療従事者の確保もままならない状態となり、医療機関の存続そのものが危機にさらされている。全ての患者・国民が安心して適切な医療を受けられる体制を整えることは、日本国憲法に定められた国の責務であるはずだ。医療資源は必要不可欠な社会保障である。
 中医協では、今後も2026年2月上旬の診療報酬改定の諮問答申に向け、審議が続く。協会は、今次診療報酬改定に強く抗議するとともに、国民のいのちと健康を守る立場から基本診療料を中心とする診療報酬の十分な引き上げと患者窓口負担の軽減を求める。

2026年度診療報酬改定率に抗議する談話[PDF:9.66KB]