公開日 2026年04月30日

東京保険医協会 副会長 須田 昭夫
最高裁で違憲とされた「トランプ関税」
米国大統領には関税権の一部が委任されているが、世界中に重い関税をかけまくるトランプ関税が、最高裁で違憲とされた。トランプ大統領が課した「緊急事態」を根拠とする包括的な関税が、議会が大統領に委任した権限の範囲を超えているとされて、最高裁により違憲(権限逸脱)と判断されたのである。
アメリカでは憲法上、「通商・関税の権限」は議会にあるが、議会は、特定の条件下では大統領に関税調整の権限を委任している。代表例は通商拡大法232条で、国家安全保障を理由に特定の品目に関税を課す権限が委任されている。大統領は法律が定めた条件の範囲内でのみ権限を行使できるという仕組みである。
一方、IEEPA(国際緊急経済権限法)では、外国の脅威に対して「緊急事態」を宣言した場合に経済制裁などを発動できるとされている。トランプ大統領は、このIEEPA(国際緊急経済権限法)を根拠として、ほぼ全世界に対して関税を課していた。最高裁が問題視したのは以下の点である。
①IEEPAには「関税」の記載がない
米憲法第1条第8節で、課税権は議会に属すると規定されている。
IEEPAは特定の外国の脅威に対する「経済制裁」について規定しているが、「関税」の賦課についての記載はない。同法が大統領にあらゆる国のあらゆる製品に対して無制限の金額・期間で関税を課す権限を与えている、とする政府の解釈は退けられた。
②議会の委任の範囲を逸脱
最高裁は、「大統領は議会が定めた条件を超えて関税を課すことはできない」という原則を強調した。議会が関税を課す権限を大統領に与える場合、明示的な文言と厳格な制限の下で行われる。しかし、政府側は議会による授権の存在を示すことができなかった。
③「国家緊急事態」の不適切な適用
政府は、緊急事態に対応するために緊急法制は広く解釈すべきと主張し、戦時下の大統領権限にも言及したが、最高裁は、曖昧な文言の中に(課税権のような)重大な権限の委任を読み込むことには慎重であるべきだとして、大統領は平時の課税権を有しておらず、現在は戦時でもないとした。
なお、この判決ですべてのトランプ関税が無効となったわけではない。通商拡大法232条(国家安全保障)を根拠にした鉄鋼・アルミへの関税は判決の対象外であり、有効とされている。つまり、法律の枠を超えた部分が無効とされたということである。療以外で「利活用」すれば、まさに医療情報の漏洩である。医療という機微的な情報にかかわる健康保険証に、マイナンバーカードの情報も結合して、第3者による閲覧と利用を可能とするシステムを許してよいのだろうか。
オンライン資格確認義務化の法的な問題点
東京協会が中心となって呼びかけた「オンライン資格確認義務不存在確認等請求訴訟」の控訴審が6月10日に結審を迎える予定だ。
日本の法体系においては、国会が作る「法律」と「省令」の間には明確な上下関係がある。省令は、「法律が委任した範囲の細かいルールを定めるだけ」という立場であり、法律を超える義務を課すことはできない。医療分野では、健康保険法を施行するために厚労省令の「療養担当規則」がある。しかし、政府は健康保険法本体ではなく、療養担当規則の中でオンライン資格確認の設備の設置を義務付けた。しかも医療機関認可の取り消しという罰則を持ち出し、医療機関に圧力をかけた。
健康保険法が療養担当規則に委任しているのは「療養の給付」であり、被保険者の資格確認方法の取り決めは委任の内容に含まれていない。従って、省令でオンライン資格確認を義務付けたのは違法であり、無効だ、というのが同訴訟の論点である。
委任されている範囲を超えた取り決めが無効であるという点で、上述の「トランプ関税」と同じ構造の問題が見えてくる。
医療現場の混乱は「制度設計の不備」
オンライン資格確認の義務化によって、実際に起きている問題の代表的なものは以下のとおりである。
①資格確認のトラブル
認証エラー、文字の●(くろまる)表示、個人情報の紐付けミス、オンライン資格確認システムの障害等。
②受付窓口の負担増
トラブル対応、高齢者への説明、「無保険扱い」になるリスク等
③中小医療機関の経営圧迫
システム導入費用、設備投資、回線や端末等諸費用
④IT人材の不足
IT人材はAI等の需要拡大で獲得が厳しくなっている。
これらの要因が重なり、閉院・廃院の増加につながっている。
「医療DX」は再検討が必要
政府は、「医療DX」のために、健康保険証の廃止(実質的なマイナ保険証の義務化)、マイナ保険証の取り扱いをしない医療機関への罰則、電子カルテ導入の事実上の強制、オンライン資格確認端末の設置義務化など、医療の形を大きく変える制度変更を拙速に進めてきた。
マイナ保険証への一本化は、本来任意であるはずのマイナカードの取得を半ば強制するもので選択権の侵害であり、医療機関に過度な義務を課すのは、営業の自由(憲法22条)を侵害しているのではないか。個人情報保護の観点から、国民の自己情報コントロール権の侵害にも繋がる。
「医療DX」は、医療制度の根幹に関わる大きな政策である。だからこそ、国会での十分な審議、医療現場の実態調査、段階的な導入、代替手段の確保等が必要であった。だが実態はその逆であり、国会での議論は軽視され、医療者の声は反映されずに、全国一律で実行されてきた。その結果、医療界の大混乱や閉院・廃院の増加などを来している。
正当な手続きの下で、受診する人のための医療に資する「医療DX」を再検討する必要がある。
(『東京保険医新聞』2026年4月25号掲載)


