公開日 2026年10月07日
医師・歯科医師1230人が控訴人となり、国とたたかったオンライン資格確認義務不存在確認等請求訴訟控訴審について、9月16日、東京高等裁判所101号法廷で判決が言い渡された。控訴人25人を含む約100人が傍聴した。
判決は、控訴人側の請求①オンライン資格確認を行う公法上の義務がなく、必要な体制を整備する公法上の義務がないことの確認、②原告1人あたり10万円の賠償、のいずれも棄却した。原告団は最高裁に上告を行う方針だ。

東京高裁前で不当判決に抗議する控訴人ら(9月16日)
控訴人の主張に向き合わない判決
健康保険法70条1項が厚生労働省令(療養担当規則)に委任しているのは、「療養の給付」であり、被保険者の資格確認方法については委任の内容に含まれないことを、控訴人は一貫して主張してきた。
一審判決が、健康保険法70条第1項には「療養の給付を担当し」と、「担当」の文言が用いられていることを重視し、資格確認方法についても委任の対象に含まれるとの判断を示したのに対し、弁護団は「担当」の文言に対象を広げる意味はないこと、また、「委任命令」に関する適法性・違法性を判断した過去の最高裁判例(最判)11件を引いて、法律が下位の法令に委任する場合、「委任する授権の趣旨が法律の規定等から明確に読み取れること」が必要であることを示し、原判決の誤りを指摘してきた。
しかし、高裁判決ではそのうち限られた判例についてしか言及されなかった。平成18年最判、令和2年最判については「いずれも本件とは事案を異にするもの」とした。また、平成25年最判の事案と比較して、今回の事案は「職業活動の自由の制約の程度が相対的に大きいとはいえないことを考慮すると、その判示が本件にそのまま妥当するものとはいえない」とし、控訴人の訴えを退けた。
判決後、AP虎ノ門で報告集会および記者・原告説明会が開かれた。
報告集会では、竹田智雄全国保険医団体連合会会長が、オンライン資格確認義務化を理由とした閉院・廃業をこれ以上増やしてはならない、国民皆保険を後世に伝えることが大切だと挨拶した。また、全国から集まった原告の医師・歯科医師から「障害者等、マイナ保険証を持てない人がいることが無視されている」「オン資のトラブルで、患者が窓口で10割負担せざるをえないケースが多い」「情報漏洩を起こすようなデジタル庁にDXを任せて良いのか」等、様々な発言があった。
記者・原告説明会で、原告団弁護団長の喜田村洋一弁護士は、国権の最高機関である国会で決めるべき事柄を、厚労省の役人たちが勝手に取り決めて良いのかがこの裁判のテーマだとした上で、「私たちが示した委任命令に関する最高裁判例に対し、高裁判決は、別の事案であるということだけで切り捨てているが、事案が異なるのは当然だ。重要なのは、これらの判例で最高裁が『委任する授権の趣旨が法律の規定から明確に読み取れなければならない』という判断を示したことだが、判決ではその点を無視している。我々の主張に正面から向き合って反論することを回避し、ただ国側を勝たせるためだけの判決だ。最高裁判例に明確に反しているので、上告して最高裁でたたかいたい」と述べた。
牧田潤一朗弁護士は、「言葉に対して非常に甘い判決であり、看過できない。曖昧な文言を法律に入れれば、後は省令で好き勝手に決められるという前例を作ってはならない」と述べた。
小野高広弁護士は「判決には『社会通念上』『当裁判所に顕著な事実』などの主観的な記述が目立つ。正面からの反論を避け、ごまかす時に使われる文言だ」と指摘した。
二関辰郎弁護士は「結論ありきの判決だ。二審独自の内容は薄いと言わざるを得ない。このままでは、国会による統制が及ばない領域を行政に認めることになる。本訴訟は、民主主義、法治主義を守るための重要な取り組みだ」と、あらためて訴訟の意義を強調した。

記者・原告説明会の模様(9月16日、AP虎ノ門)
民主主義を守る取り組み たたかいは最高裁へ
出席者からは、「療養の給付という言葉は、現物給付について明確に定めるために使われていると思うが、判決では触れられていない。健康保険法について理解していないのではないか」との意見があり、弁護団は「現物給付の仕組みにおいて、資格確認は被保険者側が一部負担金以外の支払い義務を免れるための行為であり、健康保険法上でも患者側の義務として書かれている。そのことも我々は主張してきたが、判決では触れられていない」と回答した。
また、「判決はどういったプロセスで決まるのか。裁判官たちは最高裁判決について理解しているのか」との質問に対しては、「裁判官は我々が引用した最高裁判決については当然理解しているはずだ。結論が先に決まっているから、事案が違うという理由で逃げている」と回答した。
佐藤一樹原告団事務局長からは、上告に向けて委任状が900人以上集まっており、1000人以上を目標として、委任状の集約を進めていきたいとの報告が行われた。
最後に、原告団の中村洋一副会長が、「判決は残念な内容だったが、負けたことに対する落胆はなく、明日からまた頑張ろうという気持ちだ。民主主義を守る取り組みだという認識が、最高裁をたたかうための原動力になる。これからもご支援、ご協力をお願いしたい」と挨拶し、閉会した。
(『東京保険医新聞』2026年10月5日号掲載)


