【主張】協会の運動実る――支払基金、病名漏れ再審査請求を受付へ

公開日 2013年09月05日

 『医事新報』2013年5月4日号、89ページをご覧になった先生方は驚かれたのではないか。「診療報酬の病名漏れの扱い」と題して支払基金本部の見解が載っていたが、その内容は「医療機関からの病名漏れを理由とする再審査請求については、症状の経過等について医療機関から客観的な検査データ等に基づいた詳細な説明がなされ、病態が確認できる場合は、これを参考に再審査請求を決定する」という画期的なものであった。

 これを受けて、6月6日に行われた保団連と支払基金本部の懇談でこの内容は確認され、さらに協会からの問い合わせに対し、支払基金東京支部からも「本件に関しては、従来から基金本部が述べた通りの対応を取っている」との回答を得た。

 協会は納得のいかない減点については再審査請求を行うよう一貫して運動してきた。その結果、以前は保険者側の100分の1しかなかった診療側の再審査請求も、今では30分の1まで増加している。しかし、このなかにあって「病名漏れ」が理由の再審査請求書だけは実質的に審査されず門前払いされてきた。

 病名漏れの原因には、主にレセプトへの入力ミスやカルテの病名書き忘れ等、医療機関側の過誤によるものが挙げられる。しかしこれは、忙しい診療時間内の人為的ミスであって意図したものではないことは明白である。実際に診療行為が行われていれば診療報酬の請求権は保険医側に法的にも厳として存在するのであって、支払基金に再審査申し出を拒否する根拠は何もない。

 支払基金が言うところの拒否理由は、「レセプトが漏れなく正しく作成されていることを前提に支払基金は審査し、その結果を受けて保険者は支払いをしている」というものだ。再審査請求を拒否する法的根拠は何もないにもかかわらず、長年に渡り査定で受けた医療機関の経済的損失が無視され続けてきたことは、由々しき問題と言わなければならない。

 この度、支払基金が病名漏れに対する再審査請求を認めたことは、保団連と協会の辛抱強い運動が実を結んだ快挙であり、個別指導の録音、弁護士帯同を認めさせた成果に次ぐものと言えるだろう。

 レセプトの記載不備を減らす努力は医療機関側として行うべきであり、レセプト提出前に病名漏れ等がないよう十分な点検を行う必要があることは論を待たない。それでも病名が漏れてしまった場合は「傷病名の診断が付いた根拠となる客観的な検査データ等に基づく詳細な説明文を添付」したうえで、支払基金に対し再審査請求を行うことが重要である。

 今後の課題としては、再審査請求書に添付する「詳細な説明文」について、どの程度の内容が求められるのか、また客観的検査データの範囲をどう考えるかなど、症例の収集・研究を進めながら、協会は病名漏れの100%復活を目指し、なおいっそうの再審査請求運動を展開していきたい。

(『東京保険医新聞』2013年9月5日号掲載)