医療事故調検討会「取りまとめ」 ――協会、パブリックコメントを提出 医療安全「学習型」の制度を

公開日 2015年05月25日

10月に施行される「医療事故調査制度」の具体化を図る政省令等を検討していた厚生労働省の「医療事故調査制度の施行に係る検討会」(以下「検討会」)が3月20日に「取りまとめ」を発表した。これに対して東京協会は4月15日、パブリックコメント「医療事故調査制度の施行に関して」を提出した。医療機関に「説明責任」を課すのではなく、医療安全に結びつく「学習」目的の制度とするよう求めた。

WHOドラフトガイドラインが指摘しているように医療事故の報告制度には「学習」を目的とする制度と「説明責任」を目的とする制度の2種類があり、一つの制度に二つの機能を持たせることは困難であると指摘されている。また、医療安全のためには、学習型のシステムでなければならず、非懲罰性、秘匿性、独立性が高度に担保されなければならない。

東京協会はこの立場で、マスコミ、国会議員、厚生労働省はじめ関係省庁への働きかけを行ってきた。

こうしたなかで厚労省は、医療事故調査制度について、「(WHO)ドラフトガイドライン上の『学習を目的としたシステム』にあたります」と明記し、ホームページで公表した。同省ホームページ「医療事故調査制度について」の「Q1.制度の目的は何ですか?」に答えたもので、「WHOドラフトガイドライン」が掲げる非懲罰性・秘匿性・独立性の3原則を示し、わが国の制度はこの考え方に「整合的なものとなっています」と答えている。

しかし、「検討会」では、院内調査報告書の遺族への説明方法について、直前まで「調査の目的・結果を遺族に分かりやすく説明する」とされていたものが、「遺族が納得する形で説明するよう努めなければならない」とされ、最終的には「遺族が希望する方法で説明するよう努めなければならない」と、一部の遺族側構成員や弁護士の構成員の強烈な働きかけにより変更されている。

調査制度の設計・運用次第で「説明責任」「責任追及」型の医療事故調査制度になることが懸念される。今後も厳重な監視が必要になっている。

(『東京保険医新聞』2015年5月25日号掲載)