対都交渉 ぜん息医療費助成制度 条例改定で“後退の危機”

公開日 2014年09月25日

協会は9月4日、東京都知事宛に提出した2015年度予算等に関する請願に基づき都福祉保健局と懇談した。

拝殿会長は懇談のなかで「医療・介護総合法が成立し、国民には2025年には死に場所がなくなるとの懸念がある。これ以上の制度改悪が進めば医療・介護の現場は立ち行かなくなる。現場と行政が手を取り合って様々な課題を解決していかなくてはならない。都は『国と区市町村の取り組み待ち』の姿勢ではなく、広域自治体としての役割を発揮していただきたい」と述べ、都に積極的な役割を果たすよう要望したが、福祉保健局は例年通り、消極的な回答に終始した。

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なかでも、ぜん息医療費助成制度の条例改定について、認定患者への自己負担導入と新規認定を打ち切る方針を示したことは重大で、方針の撤回を強く要請した。同請願では、麻しん・風しん対策、予防接種相互乗り入れ等の制度改善、無保険者の健診確保、医療・介護供給体制、保険料・窓口負担軽減、審査・指導の改善等を求めた。以下、都との主なやり取りを紹介する。

感染症対策

【協会】 MRワクチンの予防接種について、今までのやり方では90%弱の接種率(II期)のままだ。さらに接種率を上げるため、教育委員会と連携して入学前に接種を終えるように保護者に情報提供するなどできないか。

【都】 定期予防接種の実施主体は区市町村なので、各区市町村に取り組みをお願いしたい。教育委員会も頑張って様々な取り組みを行っているが、保護者からの協力を得るのも難しい現状がある。先生方も保護者にアピールしていただきたい。

【協会】 CRS児を早期に見つけて早期療育に取り組む墨田区モデルを東京都全体に広げてほしいのだが、どうか。

【都】 墨田区モデルは素晴らしいので、自治体同士の横のつながりで参考にしていってもらいたい。

【協会】 ワクチンの相互乗り入れ、償還払い制度などを広めていただくよう、協力をお願いしたい。

【都】 定期接種は居住自治体が委託し、地元の信頼できる医療機関で行われるべきだ。居住自治体と契約をしていない医療機関で受けた予防接種に対して償還払いをするというのは本筋ではない。

医療・介護提供体制

【協会】 病床再編は国が考えるべきものなのに、大まかな流れを決めて肝心の病床整理は都道府県に押し付けた。都の担当職員の方には同情するばかりだ。東京都の今後の病床計画をどのように考えているか。

【都】 2014年10月からの病床機能報告を受けて、国が作成する指針が出てから判断する他なく、現時点ではお答えできない。

【協会】 要支援者の介護サービスが地域支援事業に移行するが、都はどのような支援を行うのか。

【都】 自治体の介護保険担当者と有識者を集めて意見交換会を設けている。また介護予防機能強化支援員を設置する区市町村を支援する事業を行っている。

公害・環境対策等

【協会】 ぜん息医療費助成があると発作が起こる前に患者が定期通院するので、健康状態の管理が行いやすい。都内43地区医師会も制度存続を望んでいる。現行制度を後退させないでいただきたい。

【都】 ぜん息医療費助成は過去の自動車排ガスの影響を受けた患者を救済するもので、現在はかなり環境改善されてきており、財源問題と合わせてみても都単独でできる最大限のことをやらせていただく。本来国が行うべきもので、制度づくりを求めていく。

【参考記事】
公害患者と家族の会が記者会見 現行制度の存続強く求める
東京保険医協会 主張「新規認定打ち切り、有料化を許すな!! 引き続きぜん息医療費の助成を」

医療費等の助成

【協会】 日の出町では、75歳以上の窓口負担無料化で一人あたりの医療費が下がっている。マル福のような都独自の医療費等の助成を行っていただきたい。

【都】 日の出町のデータは大変勉強になる。都独自の助成は現在考えていない。

【協会】 無料低額診療所に都立病院が入っていない。都立病院が率先してぜひ取り組んでいただきたい。

【都】 担当課(医療係長)に申し伝える。済生会中央病院はもともと都立病院の時期もあった。

医療機関への指導等

【協会】 個別指導時に弁護士を後方に座らせていては、法的な助言ができない。なぜ隣席に座らせないのか。

【都】 診療の専門的な話は医師からの聞き取りが必要で、かつ患者の個人情報の点では弁護士を隣に座らせることはできないと考える。

【協会】 日弁連からも意見書が出ており、弁護士が後方に座らせられることに強い疑問を持っている。加えて他府県では弁護士を隣に座らせるケースを認めているところもある。そういった体制づくりをぜひともお願いしたい。

災害時の電力確保

【協会】 医療機関の自家発電設置助成でプロパンガスによる自家発電装置について助成する制度があったように思う。重油による自家発電装置では、8時間分の燃料しか持つことができず、すぐに使えなくなってしまう。ソーラーパネルなど、さまざまなエネルギーによる自家発電装置の設置促進策をお願いしたい。

【都】 電力確保は本来国が行うべきと考えている。

(『東京保険医新聞』2014年9月25日号掲載)