3ワクチン財源負担 国は軽く、地方は重い――住民税増税分を充当

公開日 2013年02月15日

2010年度途中から2012年度にかけて、子宮頸がん、ヒブ、小児肺炎球菌ワクチンは「子宮頸がん等ワクチン接種緊急促進事業」により、国の「特例交付金」が45%、区市町村負担が45%で、全体の90%が公費でまかなわれていた。

市町村負担分は、地方交付税交付団体であれば地方交付税として国が補填してきたが、富裕団体とされて、地方交付金の支給がない東京23区などの不交付団体は、自主財源からの持ち出しである。また公費カバーの対象とならない10%分について一般財源から補填し、全額無料としている自治体も多い。

軽減された国の負担

今回の3大臣合意では、3ワクチンの定期接種化の財源について、「緊急推進事業」による「特例交付金」526億円(2012年度)を廃止して国の負担を軽減する一方で、年少扶養控除廃止による住民税増税分の一部522億円を財源に充て、それでも90%に満たない場合は、国が地方交付税交付金として負担することになった。

定期接種の無料化を継続するためには、残りの10%分も区市町村が負担することになる。

3ワクチンの定期接種化は、国の負担削減分を地方に肩がわりさせる構造となっており、自治事務としての側面がクローズアップされ、国の責任が後退したといえる。

23区は財政負担が増加

図画像

定期接種化される3ワクチンの費用について、地方交付税交付団体では「年少扶養控除廃止増収分」と「地方交付税交付金」という2つの財源を持つことができる(図1)。23区などの不交付団体ではこれまでの「特例交付金」がなくなる上に、財源は「年少扶養控除廃止増収分」のみとなり、大きな負担を強いられる(図2)。

ワクチン接種は個人を守るだけでなく、皆で接種し、社会で免疫を獲得するという観点を重視しなければ意義の薄れる事業である。自治体ごとの財政構造の違いに関わらず、住む地域やお金の有無に関係なく、希望するすべての子どもがワクチンを接種できるようにすることが不可欠だ。地方自治体の一般財源に頼るのではなく、国には財源・制度面で保障していく責任がある。

なお、現行の定期接種財源は、総接種費用の9割を公費負担とする方針だが、詳細は不明である。