入院中の患者の他医療機関への受診の算定制限を撤廃してください

公開日 2012年06月01日

2012年6月1日

東京選出国会議員 各位
厚生労働大臣 殿
厚生労働省保険局長 殿
中医協委員 各位

東京保険医協会
会長 拝殿 清名

 2010年度診療報酬改定で入院中の患者の他医療機関受診の算定制限が出来高病床にも拡大され、この間、医療関係者の他、患者団体からも撤回を要望してまいりましたが、2012年度改定においてもごく一部緩和が図られたものの算定制限は残されました。

 今次改定では、結核病棟、精神病棟、有床診療所の入院患者が透析や共同利用を進めている検査(PET、光トポグラフィー又は中枢神経磁気刺激による誘発筋電図検査)のみを目的とした場合に限り、入院基本料の減算率が緩和される他、上記病床入院患者が透析のみを目的として受診した場合に他医療機関側で慢性維持透析患者外来医学管理料を算定できる等、制限が一部緩和されました。

 さらに、3月30日発出の厚労省事務連絡で突如、入院中の患者の他医療機関への受診に関して、医療機関間で診療報酬を合議精算する方法が示されました。それにより、他医療機関では保険請求はせずに、他医療機関で実施された診療に係る費用は入院医療機関において算定し(入院料に包括されている費用を除く)、入院料は減額せずに算定することとなります。

 この合議精算の方法は、診療報酬上は保険診療の扱いとなりますが、他医療機関が入院医療機関に費用を請求する際、税法上は自由診療と扱われ課税収入となり、入院側では他医療機関への支払いで赤字になることさえあります。保険診療のルールや、税法上の取り扱いとの整合性がなく、矛盾点がかえって増えています。

 医療機関の機能分化、診療内容の多様化、専門分化が進む中、診療報酬では医療機関の連携については評価をしております。さらに、医療法上の診療科名も身体の部分や患者の疾患等が取り入れられています。一方、入院中の患者の他医療機関受診についてはそれらの状況の変化は考慮されていません。

 患者の病態は多様で、認知症やがん等の専門的な治療を要する疾患や合併症を抱えた患者に対し、入院医療機関のみで対応することは困難な場合もあり医療連携は不可欠です。特に地域に密着した中小病院や有床診療所で、複数の疾患を持っている患者を受け入れるには、他医療機関への受診が必要な患者は増加傾向にあります。

 このように様々な矛盾をはらんだ非常に複雑なルールは医療機関での理解は困難を極め、請求誤りや医療現場での混乱は後を絶たず、患者には理解できない仕組みとなっています。

 以上のことから、下記の事項の早急な実現を求めます。

一、患者も理解できない入院中の患者の他医療機関への受診の算定要件は早急に凍結すること。

一、その上で、医療機関の機能分化、診療内容の多様化、専門分化が進む中、入院中の患者であっても他医療機関で行った治療の診療報酬が算定できるようにすること。

一、入院中に他医療機関の受診が必要な場合の医療連携のあり方を検討すること。

以上

入院中の患者の他医療機関への受診の算定制限を撤廃してください[PDF:106KB]