CRSを根絶するため風しんワクチンの臨時接種を求めます(田村厚労大臣宛て)

公開日 2013年07月17日

2013年7月17日

厚生労働大臣 田村 憲久 様

東京保険医協会
会長 拝殿 清名

 

 貴職におかれましては、日頃より国政の重責を果たされていることに心より敬意を表します。

 私ども東京保険医協会は、東京都の保険医約5,270人で構成し、患者・国民の命と健康、皆保険制度を守るために活動している団体です。

 CRS(先天性風しん症候群)は2012年10月から現在までに12例発生しています。米国CDC(疾病管理予防センター)の「VPD Surveillance Manual(第5版、2012年)」によれば、CRSの赤ちゃんは、生後、長期(一年以上)にわたって咽頭部や尿中への風しんウイルスの排出が続くことがあると指摘されています。そのため、新生児室やNICUで周囲(他児)への感染対策が必要になるなど、小児の医療体制そのものに大きな影響を与えます。CRSは有効な治療手段が無いことから、これ以上の感染拡大はなんとしても阻止しなくてはなりません。CRS、風しん撲滅のためには、風しんに対する免疫を持たない可能性のある国民全員がワクチンを接種することが必要です。

 大阪府の富田林市では、医師会が19歳~49歳の住民を対象に無料で風しんのワクチンの集団接種を始めました。また、仕事を休んで医療機関に行くほどの余裕が無い実情を汲んで、千代田区保健所は本年4月から風しんについて職場等での集団接種を認め、接種を促進しています。このような接種を効率的に行う手法を地域に学び、国が責任を持って風しんワクチンの接種を推進すべきです。

 以前から、流行の危険性は指摘されており、さらに国立感染症研究所の週報を見れば、2011年の夏ごろから風しん流行の兆しはあり、本年には大流行することは充分に予測できたところです。流行はいずれ終息すると予想されますが、それに安堵することなく、来る再流行に備えるため、接種率目標を設定し、ワクチンを確保すると共に一斉接種をすることで風しんの流行およびCRSの発生を即刻阻止すべきです。MRワクチンの接種であれば麻しんの撲滅にもつながります。

 チリでは2005年CRSが3例発生後、2007年に4000例の風しんが報告されました。この際、チリ政府は19歳~29歳の男性を対象に一斉に予防接種を行い(接種率92.3%)、翌年以降の流行を阻止しました。またコスタリカでも1999年に15歳~39歳を中心に約1300例の風しん感染と30例のCRSが発生しましたが、2001年には当該年代に予防接種を行い(接種率80%以上)、その後の風しんの流行は見られません。我が国においては、既に10000件を超える風しんが報告されていることから、他国と同様に一斉にワクチン接種を行う段階にあります。風しんは6~9年のサイクルで流行するとされ、万一、風しんの再流行を迎えれば、行政への批判が一層強まることは必至です。

 以上のことから、下記の点について要望いたします。

  1. CRSを根絶させるため、20代から40代のすべての男女が無料で風しんの予防接種を受けられるようにすること。そのために、予防接種法第6条第2項に基づき、臨時接種を指示すること。
  2. 20代から40代のすべての男女が風しんの予防接種をうけるために必要なワクチンを輸入を含め早急に確保し、定期接種と同等の補償を行うこと。
  3. 風しんワクチンの接種率を高めるため、集団接種が出来るように都道府県、市町村、事業所に働きかけること。

以上

CRSを根絶するため風しんワクチンの臨時接種を求めます[PDF:300KB]
※ 同日付で、猪瀬東京都知事宛にも要望書「CRSを根絶するため風しんワクチンの臨時接種を求めます」を提出しました。