CRSを根絶するため風しんワクチンの臨時接種を求めます(猪瀬都知事宛て)

公開日 2013年07月17日

2013年7月17日

東京都知事 猪瀬 直樹 様

東京保険医協会
会長 拝殿 清名

 

 東京都におかれましては、いち早く風しん蔓延予防のために緊急対策を摂られたことに敬意を表します。6月24~30日の1週間に新たに確認された風しん患者は359人と500人を下回りましたが、未だ予断を許さない状況です。CRS(先天性風しん症候群)は2012年10月から現在までに12例発生しています。米国CDCの「VPD Surveillance Manual(第5版、2012年)」によれば、CRSの赤ちゃんは、生後、長期(一年以上)にわたって咽頭部や尿中への風しんウイルスの排出が続くことがあると指摘されています。そのため、新生児室やNICUで周囲(他児)への感染対策が必要になるなど、CRSは個人の問題にとどまらず、小児の医療体制そのものに大きな影響を与えます。

 2020東京オリンピック・パラリンピック招致委員会が2013年2月13日に国際オリンピック委員会(IOC)に提出した基本計画書(申請ファイル)では「日本では、高い公衆衛生が実現されているため、最近10年間において疫学的な問題は生じていない」と報告されています。しかし、2013年1月以降、我が国では風しんの発症例が12000件近くも報告されています。風しんは6~9年のサイクルで流行するとされ、東京オリンピック開催が決定した場合、2020年に再度流行しオリンピックの運営に支障をきたす恐れもあります。

 CRSは有効な治療手段が無いことから、これ以上の流行拡大はなんとしても阻止しなくてはなりません。CRS、風しん撲滅のためには、風しんに対する免疫を持たない可能性のある国民全員にワクチンを接種することが必要です。

 大阪府の富田林市では、医師会が19歳~49歳の住民を対象に無料で風しんワクチンの集団接種を始めました。また、仕事を休んで医療機関に行くほどの余裕が無い実情を汲んで、千代田区保健所は本年4月から風しんについて職場等での集団接種を認め、接種を促進しています。このような接種を効率的に行う手法を地域に学び、都が責任を持って風しんワクチンの接種を推進すべきです。

 また、平成20年度から24年度まで実施された麻しん・風しんの定期予防接種3期および4期の接種率も、東京都は毎年47都道府県中40位以下と芳しくありません。次回の流行では当該世代を中心に風しんがまん延する恐れがあり、対策が急がれます。

 以上のことから、下記の点について要望いたします。

  1. CRSを根絶させるため、都内の20代から40代のすべての男女が風しんの予防接種を無料で受けられるようにすること。そのために、予防接種法第6条第1項に基づく臨時接種を行うこと。
  2. 平成20年度から24年度まで実施された麻しん・風しんの定期予防接種3期・4期の未接種者を把握し、接種勧奨すること。
  3. 風しんワクチンの接種率を高めるため、集団接種が出来るように医師会、市町村、事業所に働きかけること。
  4. 上記を実現するために必要な数の風しんワクチンを輸入を含め早急に確保し、定期接種と同等の補償を行うこと。
  5. これらを少なくとも旅行・帰省が増える8月中旬までに実施すること。

以上

CRSを根絶するため風しんワクチンの臨時接種を求めます(猪瀬都知事宛て)[PDF:298KB]
※ 同日付で、田村厚労相宛にも要望書「CRSを根絶するため風しんワクチンの臨時接種を求めます」を提出しました。