サルビア会 労務セミナー 働き続けられる職場環境を整える

公開日 2015年08月25日

新田 香織 特定社会保険労務士

 サルビア会・就労環境部は7月22日に労務セミナー「働き続けられる職場環境を整える」を開催し、23人が参加した。

 特定社会保険労務士の新田香織氏を講師に、育児休業を取り巻く現状、就労環境を整えるために守るべき法律や利用できる制度・助成金等を学んだ。

 新田氏は、今後高齢化が進み介護者も増加するなか、ワークライフバランス(仕事と生活の調和)が推進される背景があり、就労に対して育児者、その配偶者そして雇用者も意識を変えていくことが必要ではないかと指摘した。

 昨秋のマタニティハラスメント裁判以降、妊産婦・育児者への不利益変更の判断が雇用者にとって厳しくなっているが、現場の必要に迫られる場合は、職員の同意があり双方が納得したうえであれば妥協点を見出せるのではと、労使の話し合いと信頼関係が大切と述べた。

サルビア会労務セミナーの写真

 雇用保険の育児休業給付金については支給率アップなど改善が進んでおり、2014年10月から就業制限も拡大され、月80時間以下であれば働いても受給可となったことを説明し、育休中でも労働力として頼りにできる工夫と可能性をあげた。

 また、育休復帰プランナーの活動を通して感じたこととして、育休中職員への対応を挙げ、完全休業で一切連絡を絶つのではなく、軸足を子育てから徐々に仕事に移してもらうためにも、復帰後の不安を抱える職員へ情報発信することを勧めた。

 パートタイム職員の労務管理では、労働条件通知書の明示事項に2015年4月から「雇用管理改善のための相談窓口」が追加されていると確認を促した。雇止め法理にも触れ、2013年4月施行の5年超有期契約者の無期転換ルールや、有給休暇については5日消化義務の改正案を挙げ、これらに備えて体制を整える必要があるとまとめた。

 最後に、有給休暇の計画的付与、労基法違反の相談窓口、職員の処遇変更などの質問に答えた。

 参加者からは「法律を知ることは大切だと感じた。審議中の改正案などで今後の方向性がわかった」「小規模医院には難しい側面もあるが、職員とのコミュニケーションを大事にしたい」「患者さんからブラック企業の現実を聞かされているので、労働者の立場で考えることができてよかった」などの感想が寄せられた。

(『東京保険医新聞』2015年8月25日号掲載)