《10・19東京保険医フェスタを開催》気軽に学べる市民講座 被災の教訓伝え 子どもを守る

公開日 2014年11月05日

 10月19日、東京保険医協会セミナールームで「東京保険医フェスタ」が開かれた。
 午前中は「第3回気軽に学べる市民講座―3.11を忘れずに向き合っていくために」(主催/協会サルビア会・就労環境部)として、災害時の健康管理講座が行われ、市民ら46人が参加した。
 午後は、協会会員を対象とした「医療活動交流集会」(主催/協会地域医療部)に26人が参加した。

気軽に学べる市民講座の様子
気軽に学べる市民講座の様子
気軽に学べる市民講座の様子
気軽に学べる市民講座の様子

協会サルビア会・就労環境部は宮城県保険医協会の協力を得て3回目となる市民講座を開催し、46人が参加した。

成瀬清子部長は開会挨拶で「東京で何ができるか考え、風化しそうな3.11を忘れないでいてほしい」と開催趣旨を説明。噺家・三笑亭可龍師匠の落語に続き、第1回から開催に携わる宮城県保険医協会の横堀育子副理事長は、災害公営住宅の完成の遅れや顧客離れに苦しむ水産加工業者など、沿岸部被災地の復興には程遠い状況を報告した。

長沼千恵氏 宮城県塩釜市で被災したあゆみ保育園の元園長・長沼千恵氏は、当時を振り返り、気が動転していた職員がまず落ち着き、震えていた園児もその姿に信頼を寄せたようだとして、避難訓練が大人のためにこそ力を発揮したと述べた。

避難所でトイレに行けなかった経験から、震災後も午睡中に何度もトイレに起きてしまう園児など、子どもに残った心の傷についても触れた。津波に捕らわれない災害への備えなど様々な教訓に加え、休園して止められた運営費を支給させるなど、自ら行政へ働きかける必要があった経験を紹介した。

応急処置で包帯を巻く体験中の市民講座参加者 避難や復興に際しては、地域の助けの大きさを強調し、子どもを宝だとする住民の姿に支えられたと述べた。また、園児は現行保育制度のおかげで守られたと痛感、今後職員最低基準の緩和で園児を守れるのかと問題提起した。

外科担当の田中眞希理事は、止血方法や病院でのトリアージについて説明。支援食に多い菓子パン等を喉につまらせた際の対処法や包帯の巻き方を実技で示した。広い東京では、家族でない地域住民が園児を世話することになるかもしれないと、状況を想定して考える必要性を投げかけた。

市民講座の最後に行われた「クイズ交流会」で景品を選ぶ参加者。自家製野菜や防災グッズなど多彩な景品が並んだ。 内科担当の成瀬清子理事は、火災からの避難方法や脱水状態における水分補給の仕方を説明し、経口補水液の作り方では砂糖と塩の分量サンプルを示した。「どれだけ備えておくかが肝心。あるものでできることをしよう」と、知識を持ち冷静に対処することの大切さを伝えた。

片倉和彦協会理事が提供した丹精込めた自家製野菜や防災グッズを景品にしたクイズを楽しんだ後、多久嶋美紀理事は緊急災害時必需品(東海大セット)を紹介し「いつ起こるかわからない災害に備えていただきたい」と締めくくり、盛況のうちに閉会した。

参加者からは「地域で助け合える環境が非常に大切と感じた。今日の体験を生かし、家族と対策を話し合いたい。親子の絆・保育園と地域の絆・職員の団結と責任感、みんな感謝の気持ちで結ばれていると感じた」などの感想が寄せられた。

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(『東京保険医新聞』2014年11月5日号掲載)