保険医の生活と権利を守る東京保険医協会

精神科・神経科会員懇談会を開催 社会情勢の厳しさ診療に影響 ――うつ病・障害年金の受給手続き“全カルテの写し”提出「患者のプライバシー侵害だ」

公開日 2013年11月05日

日常診療の話題や増え続けるうつ病の社会的背景などで意見を交換(10月30日)

協会組織部と研究部は、10月30日に「精神科・神経科会員懇談会」を協会セミナールームで開催し、会員ら10人が参加した。

協会では各科別会員懇談会を順次開催しており、2012年12月の整形外科会員懇談会に続く開催となった。今回は精神科・神経科を標榜する会員を対象とした。

開会あいさつで片倉和彦理事は「精神科・神経科ならではの悩みや経験を語り合い、気楽に交流できる場になればうれしい」と述べた。続いて岩田俊理事が「診療報酬の算定における疑問や問題点を出し合い、2014年4月の点数改定に向け、現場からの要求をまとめていきたい。また個人的に、福島県からの避難者が暮らしている東雲住宅(江東区)で、被災者の心のケア、支援活動に取り組んでいる。被災者支援で、私たちに何か協力ができないだろうか」と話題提供した。

参加者の自己紹介で懇談会は始まり、精神科医になったきっかけやエピソードなどが語られた。

診療報酬

診療報酬の問題では「通院・在宅精神療法」の算定要件が話題になった。

2012年4月の診療報酬改定により、初診時の点数が700点と400点に再編された(下表)。700点を算定する場合は、「精神保健指定医等」であり、「地域の精神科救急医療体制を確保するために必要な協力等を行っている」ことが算定要件となっている。

参加者からは「精神科は他科に比べて記載しなければならない書類が多い。救急医療体制に協力する余裕がなく700点の算定は諦めている」、「700点を算定しているが、救急医療体制への協力は正直大変だ」、「要件を満たせずに400点を請求しているが、持ち出しになり、やっていけない」といった意見が出された。また、精神科ショート・ケア、精神科デイ・ケアに対する同一日の異なる医療機関での精神科専門療法の算定が制限されている問題が議論になった。「患者さんの都合で、同一日に精神科専門療法を受けることはある。一律に算定制限をするのは納得できない」、「同一日に算定ができないことを知らなかった」などの声が聞かれた。

東京都職員共済組合 障害年金の受給手続き

東京都職員共済組合が障害年金の受給手続きにおいて、「カルテの写し」を初診からすべて添付することを職員に求めている問題を論議した。「実際に、初診時からのカルテの写しを提出しなければならない患者さんに対応したが、ものすごく手間がかかった」、「医師の診断書が信用できないなら、共済組合で患者さんを診察すればいい」、「カルテの写し提出を求めるのは、年金受給を抑制するためではないのか」など、批判的な意見が相次いだ。
日常診療での経験・悩みを交流

日常診療については、「会社を休みたくて診断書を要求してくる患者が増えている」、「患者さんに『あなたは病気ではないから診断書は書けない』と伝えたらトラブルになった」、「製薬会社は高い薬の売り込みに必死で、安くてよい薬が減っている」など、さまざまな経験や悩みが共有された。

後半では、うつ病が増えている社会的背景などが話題になり、「ゲームやスマートフォンなどへの依存によるエネルギー消耗が、うつ病の新たな要因になっている」、「雇用形態と労働環境の悪化によって、90年代後半から双極性感情障害が増えてきたと感じる」、「若者の集団のなかで行動する能力が著しく低下している」などの意見交換が行われた。

協会では、今後も各科別懇談会を開催していく予定だ。

精神科・神経科会員懇談会に参加して

協会ならではの気楽な懇談会/岩田 俊(はたがやメンタルクリニック)

岩田俊先生(はたがやメンタルクリニック)

都内でもさまざまな地区で、それぞれの特徴をもって開業している精神科医が集まったので、興味深い視点からの話が満載でした。

また、「初めてきた患者に休職の診断書を要求されて困った」ことや、処方した薬と適応病名が一致しなくて苦労した話など、日常診療で『ちょっと困った』率直な話題が聴けて、保険医協会ならではの気楽ないい時間になりました。このような場をこれからも作っていきたいです。

日常診療の話題で盛り上がる/片倉 和彦(双葉会診療所)

片倉和彦(双葉会診療所)

精神科・神経科懇談会では、会社を休むから診断書をほしいとさっぱりした顔で要求してくる患者とか、どうも年金の診断書を手に入れるマニュアルがインターネットにあるらしい、とか、銃刀法の書類を書くのは本当に難しい、とか、の日常診療の話題がいろいろ出ました。

東京都共済の障害年金の際のカルテコピーの提出に関しては、手間はかかるが意味はない、そんなに疑うなら患者さんをじかに診察してもらった方がいい、などの意見が出されました。

診療報酬に関しては、デイケアと通院精神療法の同日併算定不可の情報がなかった、疾患名と保険病名が合わない、などの話が出ました。精神科医が集まるので始まる前は少し怖かったのですが、始まってみると和気あいあいと話をすることができました。

(『東京保険医新聞』2013年11月15日号掲載)