被災地・宮城で反核医師のつどい―原発事故による避難生活に疲れ

公開日 2016年11月25日

反核医師のつどい/宮城2016

 11月4・5日に「反核医師のつどいin宮城」が仙台市で開催され、全国から医師・歯科医師・医学生のほか、仙台市民ら233人が集まった。
 東京反核医師の会からは向山新代表委員(協会会員)、矢野正明代表委員(東京歯科協会副会長)のほか、田﨑ゆき委員(協会理事)らが参加した。

 今回のつどいは東日本大震災で被害を受けた東北で開催され、核兵器禁止条約や原発事故を受けた被災地の現状、環境エネルギーや放射性廃棄物についてなど幅広く議論された。

 記念講演では、元外交官の美根慶樹氏が、核廃絶の国際的世論と今後の見通しについて解説。「国連総会で核兵器禁止条約制定に向けた交渉が始まろうとしているが、非保有国をいかにして核攻撃から守るのかを解決しなければ核廃絶はうまくいかない」と指摘し、「モンゴルは現在、法律で核兵器に関する一切を禁止しており、またアメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国といった核保有国は、この動きに協力する声明を出し、消極的安全保障が達成されている。こうした非核地帯を拡大することも重要だ」と訴えた。
 連続講座では、峯廻 攻守(みねまわり よしもり)医師(浪江町国保仮設津島診療所に出向中)から、原発事故・被災者の現状と、町内全域が避難地域に指定されている浪江町の状況について報告があった。

 峯廻医師は浪江町民について、「避難生活が5年を過ぎ将来展望が持てず、無関心・無気力状態になっている。また、政府の非科学的な地域区分の設定により賠償額が異なり、家族間、町民間、避難先住民との間で偏見・差別・軋轢などが生じている。年代ごとの放射線被曝に対する考え方の違いから、世代間の分断も起きている」と問題点を指摘した。

 参加者からは、「核兵器禁止条約について歴史的に学ぶことができ、理解が深まった」、「福島原発事故後5年も経過し政府は帰還政策を進めているが、浪江町では放射線が高く、避難者は苦境に置かれている」、「今回は講座が大変多く、幅広く学べ新たな知見を得ることができた」などの感想が出された。来年のつどいは東京で開催される。

(『東京保険医新聞』2016年11月25日号掲載)

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